もうすぐ side?
4日もお待たせしてすみません。
昔小学生の頃、私は虐められていた。
たぶん理由は…静かすぎるし、喋り方が鬱陶しいから、とかそんなんだった気がした。でも女子だからか暴力なんてのは滅多に無く、ほとんど無視や暴言など影で行われる虐め。クラスの女の子はみーんな、私の事が嫌いだったと思う。…けど今はもう、辛かったなんて思ってないの。
あの子に助けてもらってからね。
クラスのリーダーの子、アリアって子が居たんだけど、その子ももちろん私の事が嫌い。だから、消えろブスみたいなことを沢山言われて……ある日、カッとなっちゃったの。
「なんで………そんな事言うの、あ、あ貴女だってぶ不細工な癖に!」
それがあの子の地雷だったんだろーね。私がそう言い放った時、アリアは「はあ?!」と言ってすぐ、その場で泣き崩れた。当時の私はどうして泣いてるのか理解が出来なかった。だってさだって最初に私を傷つけたのはあの子、本当なら泣くべきは私なのに。どうして皆、私をそんな怒りの目で見るの?どうして、あの子をなぐさめるの?
意味分かんない。
〜
その日下校中、おい、と少年が青年かどちらも混ざっている丁度声変わりの時期の男から声をかけられた。私はその人の事見たことがなかった。相手も背後の女の子に「おい、こいつであってるか」なんて聞き、その子はうなづいた。
「え、ア……リアち…」
「ちょっとこい」
私の言葉を遮る様、男は言った。私が…小学3年生だから、身長差的に見たら彼は中1ぐらい、かな?すごく大きかったの。見た目も怖かった。
「……なにするの!離して…やだ!!」
腕を掴まれて、引きずられた。私は頑張ってもがいたけど、意味なんてない、だって彼はすごく力が強いもん。
「うるさい」
鬱陶しい、彼の顔からそんな気持ちが滲み出ていた。アリアちゃんは、泣きじゃくってる私を見て、ニヤニヤとしていた。その笑顔は口がおーきく歪んで、まるで人間じゃないみたいだった。私は男よりもアリアちゃんの顔が怖くて、涙と鼻水が止まらない。…なんで、私がこんな目に、遭わなきゃいけないの。
最終的に引きずられて、森に着いた。私の町は、住んでる人が少ない田舎だから誰も居ない。
「うっ…!」
木に、私の身体は投げつけられる。背中を打ってピキ、と痛い音が鳴った。じんじん、と骨に響くこの気持ち悪さは言葉で表現できないほど。
「覚悟しとけよ〜?」
ひひ、と男が歪な笑みを浮かべた。アリアちゃんとおんなじ歪み方。きっと彼らは兄弟なんだろう。私がこんなに可哀想な目に遭っているのに、笑うなんて。
「っぅう!」
私が彼らを憐れみの目で見ていると、髪を上に引っ張られて、頬を拳で殴られる。
拳は私の手の三倍ぐらい大きくて、痛みも、今までにない痛さ。
「はは、」
楽しそうに、左右と順番に男は顔を殴る。
ああ、私の取り柄は顔だけなのに、歪んじゃう。アリアちゃんみたいな顔になっちゃいそうなほど、酷く殴られる。
あ、次食らったら、やばいかも。
「ーとうっ」
上から、声が聞こえる。
その瞬間、黒髪の少年が男の顔面を脚で蹴る様におちてきた。
「なん、ぐぅっ?!」
木から、落ちてきたのかな?でも、なんでなの?
男は相当強く蹴られたのか、後方に退けた。髪も手放し、私は、木にもたれかかる様になった。
「てめっ、」
男は少年に向かって走り出す。鼻からは血が出ていて、顔は非残なものになってた。
……ざまあみろ、私とお揃いの顔になっちゃって。やっぱり、神様は私の事が好きなんだ。
私はぼんやりする目で男と少年と、不安そうな顔して草に隠れているアリアちゃんを見ていた。
男は少年を殴るために拳を掲げて走った、が、その拳が少年に触れるギリギリの所で、少年は屈む。もちろん当たる、そう思っていた男はバランスを崩して、今すぐにでも転けそうな体制となった。
ギラリ、彼の目が光る。
そこで、少年は男の腹に向かって一発入れた。ドシ!と重い音が彼らから聞こえる。男は「がぁっ、」と苦しそうな声を出した。
「あはは」と私は笑ったよ。だって、お疲れすぎる、ダサすぎる。
「何わらってやが、る……」
腹の底から憎そうな声を出す。笑うのは当たり前の事。だって面白くって、仕方ないの。
男がぐるりと私の方を向く。やばい、煽りすぎたかも……。
少年に背を向けた男は、隙まみれ。
少年は片足で男を蹴飛ばした。流石に、アリアちゃんが草から出てきてやめてよ!!と大きな声で兄を庇う様にした。
「どうして?俺、見たよ。その男がこの子、殴ってるとこ」
「で、でもぉ、おにぃボロボロ!可哀想とは思わないの?!」
「うーん、思えない!…心配ならおにぃちゃん家まで連れてってあげたら?」
「…ぢっ、じゃあ今から運ぶから今手出さないでよね…」
「いいよ」
少年は微笑んで、そして、私を見た。
「大丈夫?」
少年が私に手を差し伸べる。
夕陽と重なり、彼が光っていると錯覚するほど、神々しかった。…神様?
「…いたいよ」
「お家どこ?俺が連れてってあげる」
「ううん、大丈夫。自分でかえる」
「嘘でしょ」
「本当に!!ほっといて」
私は彼の手を振り払う。今思えば、なんであんな事したんだろうなぁ。
あっ、もしかして……照れてたのかも〜。
「そう?」
少年は申し訳なさそうな顔をして、その場を去ろうとした。
「ねぇ、名前はなんてゆうの」
「俺?俺は___松村!君は?」
「言わない」
「なんで、」
松村君は、ふは、と笑って去ってゆく。身長は私と変わらないけど、背中はとても大きく見えた。
きっと彼は神様か、ヒーローかどっちかだとおもった。
…痛い、
〜
段々、痛みが引いてきて家に帰れるようになった。まあ、もちろん帰っても、心配される訳もなくお母さんはスマホをずっと触っている。こんな人が親なんて屈辱すぎるね。早く、なくなってほしいなぁ。
私の顔は相変わらず、ぱんぱんだけど、それでも松村君に会えたのが嬉しいの。初めて、私に優しくしてくれた人。
次の日の学校では、皆が私の顔を見て笑ってた。
気味悪い、けれど、どこか嬉しそうな笑顔。いろんな笑顔が私を取り囲み、嘲笑う声がどんどん大きくなってくる。やがて私は居心地が悪くなっちゃって、保健室に行く。
「…せんせ、あの、体調が…悪いんです」
先生は私の熱を測り、何も異常がないことを確認すると、溜息を吐いた。どうしてため息をするの?熱がないと、ダメなの?私はこんなに顔がボロボロなのに。
「どうしますか、休みますか帰りますか」
適当に、気だるそうに先生は言う。
「ベットで休ませて……ください、」
私は先生の目が怖くなって下を向く。先生は「どうぞ、」とベットのカーテンを開けた。入れってこと?ほんとに嫌な先生だね。
「___え?おんなじ学校だったの?!」
私がベットに入り一息つくと、隣から男の子の声が聞こえる。
「……ぇぇっと、…松村君?」
「うん!声でわかった。あの時の子でしょ?」
「…そう、だよ」
「やっぱり〜!体調大丈夫?」
「しんど…い、かな」
「そっか、お大事に。俺もしんどい、頭が痛い」
「そりゃ…たい、へん?」
「大変」
あはは、と松村君は軽快に笑う。やっぱり彼は明るいよ。見習えないぐらい。
_____この日をきっかけに私たちは仲が良くなった。
いつも、挨拶をしたら返してくれる様になったり、笑顔をしてくれる様になった。でも、別に遊ぶわけでもないし、お話するわけでもないの。
楽しかったね。
〜
それから一週間がたったある日、私は松村にいつも通り挨拶をした。
「松村君、……あの、あの、おはよ」
「…」
彼はなんと言う事か、私をちらりとみて、何もなかった様な顔して去っていた。
え、なんでなの?私の事嫌いになっちゃった?意味分かんないいみわかんないイミワカンナイ。
神様さえも、私を嫌うの。
ずっとその日は松村君のことしか考えられなくなった。次の日も、またその次の日も、そのまた次の日も挨拶をしたけど、やっとのことで帰ってきたのは「ああ」とだけだった。もう、もうもうもう…!!!先生に言っちゃうよ?!女の子にこんな適当なんて意味わかんない!!
…一ヶ月後、松村君は転校する事になったよ。
どうやら、お母さんが亡くなったらしい。だから、返事しなかったのかな?
でもさ、でも、お母さんなんかより私を優先してよ。ちゃんと神様らしく私に優しくしてよ。
松村君がいなくなって、学校の楽しみがなくなりただ無心に学校に行く。
普通にいじめられてるし、先生も私のいじめを知らんぷり。早く、卒業したい。アリアちゃんも居なくなれ。私にとってうざいのは全部、いらない。
私は中学生もこの街で過ごした。…また、松村君に会いたい。
この願いが松村君に届いたのか、母親が亡くなった。私の母はシングルマザーだったから、親戚の叔父さんしか頼れる人は居ない。そして叔父さんの住む地域は松村君と一緒。
…ああ、嬉しい。母親が死んだのも、住む地域もお揃いね。
___松村君と同じ町に来てから、私は中学を卒業するまで、ずっと散歩する。もしかしたら、会うかもしれないもん。会ったら尾行しようかな。
高校は、何処に行くのかな?
〜
…散歩し始めてから3ヶ月、松村君を見つける事が出来た。松村君、と声をかけようとしたところ松村君の後ろには一人の女の子がこそこそと着いてきている事に気が付いた。
はあ?なにあの子。彼女か何か?うざいうざい!!しかもおんなじ中学の子じゃんか。
その女の子が同じ中学のマリちゃん、ということがラッキーだった。私は、男とホテルに向かう写真とそのマリちゃんの顔を合成させて、クラスメートのLINEに送っていった。その女の子は不登校になったの。
流石に上手くいきすぎてかわいそうだなぁ、と思ってマリちゃん家に訪れる。
「大、丈夫?……まりちゃん、あんなの嘘だって私は信じてるよ」
家から出てくるマリちゃんにこの一言かけてあげるだけで彼女は泣き崩れた。背中をぽんぽんと叩いてやると「私は本当にやってないのにぃ」とグスグスと泣き出した。うるさいなぁ、そんなのしってるよ?
私はマリちゃんを黙らせる為に、恋愛の話を聞き出した。
「私ね、他校の男子が好きだったのよ。でも、その子とは全く違う高校だから告白したくって…でも無理だったぁ」
「その…子ってさ、…何処の、高校にい、行くの?」
「○×高校。でも、なんで」
「私がこの子にマリちゃんの気持ち、伝えてあげる」
「優しいね、」
まあ、言うわけないけど。
優しい?ありがとう。私って、演技が上手いのが取り柄なの。もしかしたら人を操るのも、騙すのも上手かも。
〜
____さて、松村君と私は同じ高校に無事行ける事になった。
やった、やった。やっと会える。
でも……ただ会うだけじゃ松村君にきっと無視される。だから、マリちゃんと同じ方法で松村を一人しよう。そして慰める。人を利用するだけして、うまいことやる。
ねえ、松村君私、頑張ったんだよ。
やっと話せそう。
もうすぐ、行くね。




