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S県S市某所にて   作者: Snatch久男
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---S県S市、港町で有名なここは人口20万人程度の小さな町。

世界中様々な船がここに寄港しており、一部の商店街では外国の紙幣も使用出来る。

今年から子供の治療費は無料で、ファミリー人口増加を測ろうとしているらしい。

それ以外特に特徴もない淡白な田舎町だ。


海沿いに車を西に走らせ、市の無料駐車場に車を置く。

小道を歩くと左手に見えてくる小さな森林公園を通り抜ける。

すると一本道が見えてくる。

多少小綺麗に整えてある様子から人の気配を感じる。

長い道を登っていく。

時代錯誤な鉄の門が見えてきた。

まるで西洋の貴族の屋敷のようだ。


門をくぐり抜け石畳を走り抜ける。

玄関のドアノブには虎の彫刻があしらってあり何とも壮観である。

一見なんてことない金持ちの別荘地。----


「坊っちゃま、起きてください」

初老の執事に起こされる。

時計を見ると時刻は午前5時半。


洗面所に顔を洗いに行き、

執事がいれたモーニングティーを飲みながら軽食を取る。


鳥たちが囀っている。

この森林周辺はハクセキレイという鳥が多く飛び交っている。

シックな色合いがとても気に入っている。

しかし最近は数が増えすぎて鳴き声が少し五月蝿く感じてきた。


自然豊かな土地だ。


森の中には神社がぽつりと立っていて、そこには素戔嗚尊が祀られている。

毎朝お参りするのが僕の日課だ。


この屋敷は父の別荘地だったのだが今は僕と執事が暮らしている。

この土地は父とよく訪れた特別な場所なのである。

よく狩りに出掛けていた。

高齢で面倒臭がり屋な父だったが狩りだけは唯一の趣味だった。

でも、子どもの頃は発砲の音がとても怖くて苦手だったのを覚えている。


今年僕は齢28歳になる。

小中高はラグビー部に入り打ち込み、大学では薬学部を学び、テニスをしていた。

卒業後、しばらくは製薬会社に勤めていたが父の会社を継ぐという話になり転職。

恋人は1度もできたことはない。

好きな作家は太宰治であり、ヴィヨンの妻は常に枕元に置いてある。

果たして上手く生きれてるのだろうか、自分でも分からなくなる。


記憶に耽っていると窓ガラスがバァンと叩かれた。

黄色い固体、透明な液体、


寝起きの頭をグルっと働かせる。


これは卵だ。


そう、どうやら卵を投げられたようだ。


なぜ?


何のために?


急いで外を見るが誰もいない。

犯人はもう逃げたようだ。


「大丈夫ですか?、一体誰がこんな事を」執事は言う。

卵を投げては逃げるヒットアンドアウェイの手口。


投げつけられる物が卵程度なのは、不幸中の幸いと言った所か。

しかし気味が悪いったらありゃしない。

防犯カメラでもつけようか。


執事が窓を拭いてるのをボウっと眺めているとインターホンが鳴ったーー部下が来たようだ。

執事は窓を拭く手を止め1階に降り、部下を連れてきた。


「おはようございます、本日もよろしくお願いします」

彼の名前は榊原、28歳になると言っていた。

ゴルフ好きな男だ。

無精髭が多少生えている。

少し西洋風な顔つきであり、女性社員の人気も高い。

左手の人差し指にはシルバーのリングがはめてある。


やけに早いなと、僕は聞く。

「今日の会議は重要ですから、念には念をと早めに」


僕はモーニングティーを飲み干しながら今朝起こった卵の件を話した。


「なるほど、しかし違和感がありますね」

違和感しかないだろう。

こんな朝から人の家に卵を投げつけてくるなんて、僕は不機嫌に言う。


「違います、違和感があるのは卵の方です」

卵の方?僕は聞き直す。


「この卵、烏骨鶏の卵じゃないんですか?」


榊原の手には執事が拭いていた雑巾があった。

そこの卵の殻を見てみる。


確かによく見ると少し小柄でピンクがかった色合いのようだ。

スーパーでよく見る卵とは少し違うような。


スマートフォンで調べてみるーーーー

どうやら榊原の言う通りらしい。

これは烏骨鶏の卵だ。


「何故わざわざ高級な卵を投げつけてくるんでしょうか?」


そうだ、20個入りで3600円。

よほどな金持ちや高級な料理店でもない限り使用することは無い。

よく分かったなと僕は褒めた。


「犯人がどこで購入したか少し調べてみませんか?」


「S市で烏骨鶏の卵を取り扱ってる店を特定してみます。

もっとも、犯人が通販などで手に入れていたら宛にはなりませんが」

榊原と執事は言葉を交わした。


とりあえず朝食が食べたいな、もう腹がペコペコだ。

執事は食事の用意しに1階へ行った。

榊原と今日の会議のミーティングをすることにした。


時刻は午前6時30分ーーー

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