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もう一人いる。

作者: 猪口怜斗

※この作品はTwitterに公開しております。


 ねぇ、運命ってあると思う?あ、そんな顔しないでよ。あたくしの暇つぶしに付き合ってよ。…ふふ、ありがとう。ねぇ、貴方は運命ってあると思う?


 あたくしね、運命は一つの結末のことだと思うわ。最後の結末だけは決まっていてそれまでの過程はいくらでも道があると思うのよ。逆を返せば、その始まりがなければその終わりには一生行かないのでしょうけれどね。

なんで急にそんな話をするのかって?だってここは縁結びの神社でしょ?…ふふ、貴方とここで会うなんてこれも運命かしらね。

あぁ、恋人と別れてしまったの。だから縁結びに。そのショートヘアもそれが影響で?…ふふ、そんなんじゃないわ。とっても似合ってるわ。えぇ、本当よ。あたくし、嘘はつかないから。


あら、貴方は運命なんてないと思うのね。考え方なんて人それぞれなのだし、否定する気なんて毛頭ないわよ。まったく、失礼ね。

あたくしが信じる理由を話させてくれたら許してあげないわけでもないわよ。…ふふ、そうこなくっちゃ。ここじゃなんだし、あそこのベンチにでも行きましょ?



 これはね、ある学生の話なの。

その子は、綺麗な黒のボブヘアーが似合う子だったわ。とってもかわいい子で、優しいのも相まってすごくモテてたのよ。うらやましい?ふふ、貴方と変わらないわよ。今のあなたもすごくモテてるし可愛いじゃない。ほんとうよ!あたくし、嘘はつかないの。


…それでね、その子高校二年生の時ご家庭の事情である高校に転校したのよ。すごく憂鬱そうにしていたけれど、そんな憂鬱もすぐにはれたわ。どうしてだと思う?…せいかい!その通りなの。その子は運命の男の子と出会ったの!その男の子もすごくモテる子で少女漫画みたいだったわ。これが理由なのって?違うわ。まだ続きがあるの。


その男の子は死んでしまうの。…二人が幸せの真只中の出来事だったわ。最初に亡くなったのも彼女とのデート中だったようだし。

でもね、信じられないことが起きたの。彼女は、彼と出会う前に戻ってしまったの。精神的なことではないわよ?その通り、過去に戻ってしまったらしいわ。

彼女はそれ以降何度も繰り返してるけど必ず男の子は死んでしまうらしいわ。

信じられない?確かに、そんなにすぐ信じられる話ではないわね。でもこれは、本当に起こる話なのよ。どうして彼が必ず死ぬと思うって?…なかなかひどいこと言うわね。彼女と出会ったからって?確かに一理あるわね。あたくし?あたくしは、神様が彼のことを欲してるからだと思うの。なら彼と出会わせないんじゃって?きっと女の子が運命を願ってしまったのよ。縁結びの神様なら、それが仕事だしね。


 え?その二人の結末?…さぁ、今でもループを続けてるんじゃないかしら。

貴方なら、こんな恋愛してみたいと思うかしら。あたくしはごめんね。そんなに何度も繰り返したくないわ。


 …あら、青ざめちゃってどうしたのかしら。もしかして思い当たることでも?あぁ、これを本当に見たのかって?えぇ、見たわよ。まぁ未来のあたくしなんだけれどね。ほんとうよ?あたくし、嘘はつかないわよ。


聞いてくれたお礼に少しの秘密を教えてあげるわ。え?何度も言ってるじゃない。これは、本当に起こる話だって。

あのね、その彼女は今のループである女の子に会うの。茶髪の女の子に。ロングヘアの子でね。女の子は彼女の話を聞いてしまったの。

ふふ、貴方気付いてたじゃない。言ってたでしょ、信じられないって。あたくしは逆にあなたに信じられないわ。どうして、ループが一人だけだなんて思ったのかしら。本当に馬鹿で笑っちゃうわ。


そんな馬鹿なあなたに一つ教えてあげる。彼が死ぬのは必ずあなたと一緒の時よ。こうは考えなかったの?だれかが、あなたを殺そうとしているって。

きっとこれが最後のループね。その終わりが、貴方にとっての、彼にとってのハッピーエンドとは限らないけどね。

 嘘なんかじゃないわ。今度こそ終わるのよ。


あたくし、嘘はつかないわ。







 彼女を何度目の前で失っただろう。何度こいつに殺されただろう。

目の前に血まみれで倒れているそいつの腹にもう一度ナイフを突き立てる。こいつの言う通りこれが最後のループだ。これで、俺らが殺されることはもうない。


なぁ、なんでお前らだけしかループしてないと思った?


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