表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
998/1533

アンダーグラウンド掃討作戦(三百五十一)

 琴美が着ていたのは『熊の着ぐるみ』だ。ちょっと可愛い奴。頭は流石に邪魔だったので、横っちょに置いてある。

 エロいことで有名な宮園課長アルバトロスが、琴美の全身を舐め回すように見つめなかったのはこれが原因だ。

 何しろ現役女子大生がミニスカートで、しかもストッキングも無しで柔肌を晒していたのだから。

 もし『自由』にさせていたら、一体『どうなっていた』のかは想像に難くない。何しろ踏んでも蹴られても喜んでしまうのだ。


 潜水艦を脱出してから男ばかりの現場で作業を強要されていた。

 自宅らくえんにも帰れず、小豆バーも食えず、終わりの見えない解析と説明を繰り返す。戦場を経験したことのない者にとっては、一種の『地獄』であっただろう。

 だから『異性への思い』が、直ちに炸裂してもおかしくはない。全ては『目』が語る。経験豊富な黒田にはそれが判っていたのだ。


「もうちょっと着ておきなさい」「えぇ? 運転し辛いよぉ」

 本当はもう脱いでも構わない。宮園課長アルバトロスが居なくなった今は、もう役目を終えたも同義。

 しかし、黒田はもう少し『可愛い孫の姿』を見ていたかった。


「それ、一応『防弾』だし、なんだったら歩いて行っても?」

 苦笑いで伝えるアドバイス。嘘か本当か判らない。随分と怪しいではないか。これには流石の琴美も首を傾げる。

 アンダーグラウンドからこのトラックに移動して来たのも、着ぐるみを着るように言ったのも全て『黒田の指示』だからだ。


「中継局を変更するの?」

 目の前にあるパソコンを指さしていた。何処から調達してきたのか知らないが、ありふれたデスクトップだ。これで三台目。


「そうだなぁ。車を放棄するなら、パソコンごとだなぁ」

「それも面倒だねぇ。まぁ、その方が良いなら仕方ないけど」

 ハッキングをするのに、安全を考慮して『発信元』を強制変更していた。同じパソコンを使うにしても、IPアドレスは当然のことながら、中継局も念のため変更する。

 二台目のノートパソコンは、偽装工作のため『繋ぎっぱなし』で放置してきた。勿論『アジト』からは遠く離れた場所でだ。


「この先の『移動先』は覚えているか?」

 黒田が親指で指し示したのを見て、琴美は思わず笑ってしまった。

「いやおじいちゃん、この次は『向う』でしょ?」

 全然違う方を指していたのだ。全く。方向音痴か。

 琴美は全ての『JPSジャパン・ポディショニング・システムの座標』を記憶していた。

 この先生きのこるためには必要な情報だ。それ位当然である。現役女子大生を『舐めるな』と言いたい。物理的にも、精神的にも。


「試したんだよ」「本当ぉ? 怪しいなぁ」「本当だよぉ」

 二人は指を指し合って笑う。すると琴美が言い返す。

「私が読み上げた『アドレス』も、ちゃんと覚えてるぅ?」

「あ、当たり前だよぉ。ちゃんと覚えてるよぉ」「ホントかなぁ?」

 黒田に聞かれたから教えたのに。ハッキングに使用した『中継局のIPアドレス』だ。何に使うのかは知らないが。


「じゃぁ、順番に言ってみてよぉ」「さぁて。そろそろ行くかっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ