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アンダーグラウンド掃討作戦(三百四十九)

「俺は行かねぇぞっ! 絶対、行かねぇからなっ!」

 デブが暴れ始めた。うーん。お気持ちは判らんでもない。

 転落の始まりが『機密情報の漏洩』からの『島流し』からの『拉致監禁』からの『解析強要』からの『戦場行き』である。


 だから宮園課長アルバトロスにとって、今年は『厄年』と言って良いだろう。御諏訪様でお祓いしないからそうなるのだ。

 今からでも決して遅くはない。生きている内に行くことをお勧めしておく。


「はいはいはいはい。ちょっと大人しくさせとけ」「ほーい」

 黒田にしてみれば、面倒なことは黒井に丸投げしたいのだろう。

 突然任された形となった黒井だが、素人を押さえ込むのなんて『目で威圧』するだけで十分だ。

 髪の毛を鷲掴みにしてグッと睨み付けると、大人しくなった。


「いててて。抜けちまうだろうよぉ。止めろよぉ」

「いっそのこと、抜いてみるかぁ?」「馬鹿、やm」『グイッ』

 気に入らない『ワード』を耳にした黒井が締め上げていた。


「いてててぇっ! 抜けるっ! 抜けるっってぇっ!」

 無情にもそのままの形で車内を引っ張られて行く。

 四人が画面を覗き込んでいたのは、広報用のトラックだ。周りには所狭しと備品が転がっている。その間を縫うように二人は進む。

 元々は配送用に作られた商用車である。だから運転席から立ったまま荷室まで歩いて来れるタイプだ。それを改造したもの。


 最後尾にある『コンピューターラック』の前から、運転席の後ろまでやってくると、床の一部が蓋として持ち上がっていた。

 覗き込めばその下は、真っ暗な穴がポッカリと開いている。下は全く見えないが、アンダーグラウンドへの入り口で間違いない。


 基本的に人工地盤上は『自家用車厳禁』で、走行可能なのは『電動』かつ『自動運転車』に限られる。雨避けの屋根があるからだ。

 だから殆どは、ハーフボックスを搭載した台車が行き交っている。

 それでも『例外』はあるもので、この車はその『許可』を得たものだ。フロントガラスの所に『許可証』の提示もある。


「ほら、降りろっ」「ひぃぃ」「ゆっくりで良いからな」「ひぃぃ」

 穴の大きさは残念ながらギリギリだ。段々と姿が消えて行く。

 宮園課長アルバトロスから見つめられた黒田は、にこやかに手を振るだけ。流石は行かせた張本人。気が変わる様子はない。


「ねぇ、おじいちゃん」「んんっ? 何だい?」

 琴美に呼び止められて、黒田が満面の笑みで振り返った。

 孫は可愛い。頼りにされたら『何でも』しちゃうぞ!


「ココに、『私一人』で残るの?」「あぁ、そうなるなぁ」

 一瞬真顔になったが、車内を見回してから再びニッコリと笑う。

 散らばったダンボールから、せめて運転手でもヒョッコリ出て来れば良かったのだが、生憎今は全員出払っている。

「運転出来る?」「うーん。どうかなぁ」

 親指で運転席を指した。しかし琴美は首を傾げる。黒田は笑う。


「オートマだよ?」「私、マニュアルしか運転したことない……」

 途端に黒田の顔が歪む。今から変速機の変更は、かなり困難だ。

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