アンダーグラウンド掃討作戦(三百四十二)
「#一〇五。当たり所が悪いと自爆しちゃうケース。何だこりゃ」
牧夫は眉をひそめた。変なチェックリストだ。
さっきから密かに実施している『実機試験』は、現在六割を超えた所である。順調に消化中だ。しかし面倒な試験なんですけど。
エビデンスを取得して結果をサーバーに保存。チェックリストに今日の日付を記入して一丁あがり。
簡単に言えばそれの繰り返しだが、この『テストケース』が随分と厄介なのだ。溜息しか出ない。
ひっそりと実行するだけあって『レア中のレア』なケースばかり。
「えーっと、何なにぃ? 別紙#一〇五の一から三参照と。うへぇ」
複雑な条件が一枚に書ききれなかったようで、別紙に記載された条件を参照する。するとそこには、びっしりと広がる回路図と、ピンポイントに狙うべき場所、角度、当たる速度までがキッチリと指定されているではないか。やっぱり溜息しか出ない。
「全く、こまけぇんだよ。こんなケース、起きんのかよぉ」
親機にしている自動警備一五型から、支配下に置いた調和型無人飛行体に細かい指示を出す。
それだけで既に『プログラミング』の感あり。バッテリー容量を確認したら『実行』を押下してテスト開始だ。直ぐに飛び出す。
「おぉ。良いねぇ良いねぇ。やっぱ『無風』は良いやねぇ」
搭載されたカメラで状況を確認しながら、事前に設定した通りに飛翔する様子を観察。当然のことながら、画面に表示される『設定値』にも目を通しながらだ。チラリと速度を確認。
「二百五十六キロジャスト。良し。ここでクルリと反転っと」
画面には『被験者』となる自動警備一五型の背中が映っていたが、それが設定どおりに回転したのだろう。
左回りに回ったと思ったら直ぐに『ゴンッ』と衝撃が。『バーンッ』の直後にブチッと映像が途絶える。
画面上に大きく『LOST』の赤文字が点滅表示された。
「本当に『爆発』しやがったよぉ。どれどれぇ?」
母機から撮影していた『全体像』を映し出す。腕組みして観察だ。
それによると『被験者』の背中にある『収納ドック』に、バッテリーが少ない状態で『強制緊急着陸』を行うと、大爆発を起こしてしまったではないか。
しかも『被験者』の上半身が、ド派手に吹き飛ぶ程の爆発だ。
「たぁまやぁー。あっぶねぇなぁ。致命的な欠陥じゃぁん。ダサッ」
薄笑いを浮かべての暴言。どうせ他には誰もいない。好き放題に言わせて貰おう。加えて言わせてくれるなら、『俺が設計したら、こうはならねぇ』と思っている。口にしてみせようか?
『今の発言は、高田部長に報告します』
とそこへ、天井から聞き覚えのある声が。大人しくしていたミントちゃんからの『急な警告』に、牧夫は思わず驚く。
「それは無いでしょぉ」『では本部長に報告します』
「ちょっとぉ、止めてよぉ」『ピポパポ・ピピポパッ!』
無情にも電話の『プッシュ音』がしたのだが、何かがおかしい。
「今のは『口真似』だよね?」『バレましたか』「もぉぉっ!」
あらら。どうやら牧夫は、人工知能三号機からも、遊ばれているようだ。取り敢えずエビデンスを保存。




