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アンダーグラウンド掃討作戦(三百三十五)

 何事も『限界』というものがある。

 赤上が鼻の下を伸ばし、『もうちょい』と覗き込んだ瞬間だった。

 素早く捲し上げた千絵チーは、スカートの下に隠していたナイフを取り出す。それに驚いたのは赤上だ。


 むしろ『覗き込んだこと』を反省していた。どうやら『趣味』又は『嗜好』が合わなかったようだ。

 じっと睨み付け、『そうじゃないだろう』とあからさまな表情を浮かべる始末。完全に理性を失っているではないか。

 千絵チーの『清楚系な見た目』に反して随分と『派手な柄』だったようだ。全く。余計なお世話にも程がある。


 一方の千絵チーは、真っ直ぐに前を見ていた。

 色気も武器の内だ。油断させて『グサリ』とやるのが常套である。

 両手にナイフを持ち『二刀流』にするのが流派だ。太もものホルスターからナイフを引き抜き、逆手に持った状態で構える。

 目の前のスケベ野郎を切り刻む準備が整った。あれ、整った?


 左手にナイフの感触がない。今は決めポーズの時間で、『左右対称』になっていなければならないのに。

 ゆっくりと左手の親指を拳の上で回してみるが、『いつもの手触り』がない。バレないように、ゆっくりと両手を体の前へ。

 手首をクロスさせてチラリと下を見る。あらら。やっぱり無い。


 千絵チーは右手を顔の前で固定したまま、左手をゆっくりと降ろし始める。大丈夫。『左手だけ取り損ねた』ことは、まだバレてはいないようだ。目で威嚇したままスカートをたくし上げる。

 スカートの裾までは手が届かないので、真ん中辺りを持って掴み上げながら捲り上げていく。さっきと違って色気はない。

 まるで蚊に刺されたのを気にしているかのようだ。


 それでも千絵チーは止めない。『二刀流』に拘りがあるのだ。

 昨日は、空中に放り投げたA4の紙を、左右二本のナイフで三等分にすることが出来た。二十五回目で。練習の成果だ。

 そう。全て『この時のため』にある。


『パチン』『シュッ』『どやっ』

 決まった。これで『二刀流』完成だ。改めてポーズを決める。

 原因は『手の感触』で判った。どうやら『ホルスターのボタン』が外れなかっただけのようだ。何。大したミスではない。


「お姉ちゃん、もしかして『二刀流』だったの?」「……」

 無視だ。『テロリスト』に交渉は不要。『もしかして』じゃない。『最初から』二刀流だ。人を見下すような仕草にはムカつく。

 あぁ、ニヤケて左手を指さしやがって。そんなのは知らんぷりだ。


「えぇ何ぃ? しれっと取り出しちゃってんのっ♪」「煩いっ!」

 千絵チーは顔を真っ赤にして飛び出していた。

 両手にナイフを持っているのに、最初の攻撃は『足蹴り』だ。机上から華麗に飛び上がると、体全体を回転させながら強力な一撃。


「うわぁあっぶねぇ! ナイフ使わないのかよっ!」「煩い煩い!」

 赤上は素早く反応し、後方へとジャンプしていた。机から机へ。その上、減らず口までプラスして神経を逆撫でしている。

 千絵チーも負けてはいない。追うように机から机へ。着地した瞬間、間髪入れずに飛翔。今度はナイフを繰り出しながらだ。

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