アンダーグラウンド掃討作戦(三百二十八)
「いやそんなの、『誰にも出来ません』ってぇ。無理っすよぉ」
失礼にも程がある。呆れて指さしているが、その目の前で『実演されている』ではないか。何を言っているのか。
本部長の目は語る。『お前の目は節穴か』と。
「何言ってんだよ。お前もやって見ろって。ほれっ!」「おわぁっ」
ヒョイと放り投げられたヌンチャクが至近距離で飛んで来る。
器用にも高田部長はそれを躱す。驚いてはいるが、まるでそうするのを『判っていた』かのようだ。
しかも後ろを見ず、本部長の方をジッと見たままに。
後ろの壁に当たり『ゴン!』『ゴン!』と僅かな時間差で重い音が二回。最初に当たった持ち手が『鎖代わりのゴム』によって引き戻され、複雑な回転をしながら跳ね返って来る。
それについても『ここに帰ってくる』と確信していたようだ。
再び手にしたそれを、流れるように振り回し始めた。するとどうだろう。さっきより鋭い音が鳴り始めたではないか。
高田部長の上半身に『蛍』が舞い始める。
苦笑いだ。いや、いつもの笑顔である。
それを見た本部長の方はと言うと、肩を竦めて『こりゃダメだ』と呆れている。
きっと見えていたのは『蛍』ではなく、『ハエ』いや『コバエ』にでも見えたのだろう。その証拠に、振り回している高田部長の手から『パッ』と取り上げたではないか。
高田部長も苦笑いのまま、肩を竦めるしかない。
「遅ぇよ。そんなんじゃ『白』には成らねぇよ」
本部長は『避けて壁に当てやがった』と思っているようだ。『傷がついていないか』又は『回路が壊れていないか』を気にしているのだろう。ヌンチャクの様子を見ている。
「いやだからぁ、それ、どういう仕掛けなんですか?」
高田部長にしてみても、今の関心事は『色が刻々と変わる仕掛け』の方らしい。本部長に取られたのを悔やむのでもなく、かと言って褒め称えるでもない。
今の両者にある『共通の想い』とはただ一つのみ。
それは『技術者魂』この一点のみにあるようだ。
「振り回す速度でなぁ? R・G・Bの量が加算されているんだ」「へぇぇ。そうなんですかぁ」
「お前、本当に判っているのかぁ?」「えぇ。勿論です」
ほら。その証拠に二人は『議論』を始めてしまったではないか。
「嘘くせぇなぁ。良いか? これが『B!』」「おー」
言うが早いか、本部長は勝手に回し始めていた。ついでに宣言した通り、本部長の体が『青色』に染められて行く。
「続いて『G!』」「おぉっ! 紫になったぁ」
得意気な本部長と、それを煽てるような拍手。
そうなれば『次はどうなるか』なんて、火を見るよりも明らかだ。
振り回しながらも呼吸を整えた本部長が、ニヤリと笑ったではないか。ここからが『ビックリ人間』の領域か。
「行くぞぉ?」『R!』
「おい馬鹿。お前が言うなっ!」「あれあれぇ?」
指さされている。光跡が少し『青みがかった』ようだ。




