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アンダーグラウンド掃討作戦(三百二十七)

 横に居た大佐が後ろに吹き飛んで行くのを、両サイドの二人は目で追ったりはしなかった。それも当然だ。

 目の前に二人が追加で迫っている。その後ろからは、最後の一人が走り込んで来ていたからだ。


 高田部長イーグルは袖口から、スッとヌンチャクを取り出していた。正面を見たまま流れるような手付き。

 殺気まで消しているので、見た目は平然と歩いているだけのように見える。しかしヌンチャクを手にした瞬間に戦闘準備は完了だ。


 背広は全てオーダーメイド。夏服五着、冬服五着。その全ての左手袖口に『ヌンチャク用ポケット』が縫い込まれている。

 まだ手の内にあるヌンチャク。これも一見『只の丸い棒』のように見えてチタン合金の特別製。小さいが重く、当たれば当然痛い。

 半分から割れて、鎖ではなく伸縮性のあるゴムで接続されている。

 振り回す勢いで伸び縮みするものだから、素人には扱い辛い。これは奪われた後のことも考えた、高田部長イーグルの『知略わるだくみ』とも言えるだろう。

 それが『背広の色・柄』に合わせたカラーコーディネイトで、専用品として用意されているのだ。お洒落である。


 ヌンチャクの設計図を見た本部長ペンギンが面白がって、自ら試作品を作ってくれた。すると勝手に『仕様変更』が施されて、『懐中電灯』のはずが『十六色発光電灯』になってしまった。振り回す速度により、光色が刻々と変化する仕掛けだ。

 高田部長イーグルとしては不評で、『これだったら音楽も付けないと』で一蹴。残念ながら製品化はされなかった。


『ブンッ』「ぐはっ」『ブンッ』「うっ」『ゴッ』「……」

 空気を切り刻む音。それが耳に届いた頃には激痛も届いていただろう。倒れる間もなく今度は反対側から。これで勝負は付いた。

 最後の鈍い音は、普通にパンチをしただけ。それでも十分に重たいパンチだった。痛みはヌンチャクと同等かむしろそれ以上だろう。

 流石に『空手の師範代』を名乗るだけのことはある。


「うわぁー」「それ、もしかして俺が試作した奴かぁ?」

 相手をワンパンで吹き飛ばした本部長ペンギンが、笑顔でヌンチャクを指さしている。高田部長イーグルは気が付いて、両端を交互に覗き込んだ。直ぐに苦笑いだ。


「あれぇ、そうみたいですねぇ。この背広のだったかぁ」

「どうだどうだぁ? 結構綺麗に光るだろう?」

 余程の『自信作』だったと見えて、得意気に話している。しかし高田部長イーグルの苦笑いに変化は全くない。


「これ、両方光らないと意味無くないですかぁ?」

「あぁ、やっぱりそうだったかなぁ。うおりゃっ!」「うわぁー」

「そうですよぉ。片っぽだけだと、何かこう、リズムに乗れない?」

 高田部長イーグルは演舞宜しく振り回してみるが、確かに中途半端感が漂う。いや、見事な手捌きではあるのだが。


「そりゃぁお前、もっと速くだよ。ちょっと貸してみぃ?」「はい」

 演舞の途中でポンと放り投げたヌンチャクを、本部長ペンギンはパシっと受け取った。するとその流れのまま振り回し始める。

 たちまち本部長ペンギンの体が、光煌めくヴェールに包まれ始めたではないか。不気味な空気音サウンドを轟かせながら。

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