アンダーグラウンド掃討作戦(三百二十六)
真ん中を半ば強制的に譲られた大佐は、銃を構え続ける連中を見て『向うの仲間になりたい』と思う。
裏切りではない。個人的な感情だ。函館作戦に参加した奴らは、頭のおかしい奴らばっかり。後始末は大変だった。
その中でも、生き残った奴らは特別始末が悪い。
何で『ニヤニヤ』笑っているのか不思議でしょうがない。目の前に銃を構えている奴らが六人も居るのに。やっぱり頭がおかしい。
報告書によると、『敵の銃を奪いながら脱出してきました(キリッ)』と書かれていたそうだが、そんなつもりでいるのか?
「あれ、どうするつもりなんですか?」
本部長の方を向いて聞く。
「面白いから見てろ」「面白い?」「前見てろっ!」
笑いながらもきつく言われて直ぐに前を見る。
『おいっ! これは何だぁっ!』
遠くから雑音に混ざって、何だか悲痛な叫びとも言える声が届く。
しかし『何でしょうね』と横には聞けずそのまま無視だ。
『うわぁぁっ!』『何だぁ?』『銃がっ!』『ベルトまでっ!』
「おっ!」「ほらなぁ。ひっついてやんの」「大成功♪」
薄荷乃部屋には強固なセキュリティーが施されている。それは廊下から始まっているのだ。
第一段階は電磁石による武器の押収装置。第二段階は油で床がヌルヌル。第三段階は酸素が充満(空間の二十二%まで)するようになっていてからの、第四段階が火炎放射器である。
それだけ酸素があるのだ。きっと良く燃えるに違いない。
ちなみに『火炎の範囲』は、入り口ドア前から廊下の端まで。時間にしておよそ三十分。だから『最新の防護服』を着ていても無駄である。途中で三回は着替えないと、骨だけになってしまうだろう。
どうしてそんなに長い時間になってしまったのか。
それにはちゃんと理由があって、牧夫が『事故報告書』を書いて提出したのだが、握り潰されたそれによるとこんな感じだ。
いつも『ナノ秒』で考える本部長が基礎数値を出し、それを『ミリ秒』で考える高田部長が補足した。
最終的には『分』で考える牧夫が業者に発注と。
見解の相違。まぁ、今回は停止しているし大目に見て貰おう。
M16が壁に貼り付いてしまったのを見て、レッド・ゼロの一団は走り始めていた。ベルトのバックルまでくっ付いてバタバタしている奴を除き、怒りに満ちた表情で向かって来る。
しかしどう見ても、素人に毛が生えたような奴らだ。大佐は冷静に構えていた。油断はしていない。今向かっている奴ら三人が、同時に来ても対処は可能。そう訓練して来ているし、自信もある。
次の瞬間、対峙する三人対三人で対処するものと判断した。
両サイドの二人が『飛び蹴り』で、大佐の正面の奴が『正拳突き』をそれぞれ真っ直ぐに繰り出したからだ。その判断に誤りは無い。
しかし『対処方法』には問題があった。左側の本部長が右手で払い除け、右側の高田部長は左手で払い除けた。すると全ての攻撃が、真ん中に集中する結果となったのだ。




