アンダーグラウンド掃討作戦(三百二十一)
「ちょっとパパァ、何言ってんのっ!」
ヒステリックな声。富沢部長が叫んでいた。
すると『M16の一団』には驚かなかった千絵が、今度は目を剥いて驚いたではないか。
その目は『えっ何? この二人、出来ているの?』である。
しかし、直ぐに思い直す。それは違う。
確かに年の割には綺麗。だから『美魔女』には違いないが、『パパ活』をするのはもっと若い奴らだ。いやはや。首元の筋が凄い。
「もぉっ、行くなら勝手に死んで頂戴っ!」
あれ? そこは『死なないで』じゃないの? 千絵は本部長と富沢部長を交互に見る。
「何だよ。勝手に殺すなよぉ」「相手は銃を持っているのよっ!」
呑気な答えに対し、スクリーンを指さして応戦。しかしそれでも『だから?』と首を竦めている。この二人の関係とは?
千絵は必至に考えているのだが、それでも『本当の親子である』と気が付くことは無いだろう。説明しても信じて貰えるか。
「絶対にこっちを巻き込まないでよっ!」
何を考えているのか。父は本当にどうかしている。
この間『結婚記念パーティー』で実家を破壊したばかりなのに。
全く。『リフォーム代』はちゃんと払ったのだろうか。もし『ローン』だったならば、遺産放棄も考えなければならない。
「おい、行くぞっ」「いてっ。えぇっ? 俺もですかぁ?」
まだ変顔をしていた高田部長の頭をペチンと叩く。
すると嫌そうに振り返った。いや目は笑っている。二人は昔からの『腐れ縁』だ。きっとノコノコと付いて行くに決まっている。
異議なし。富沢部長は『賛成』だ。それどころか、口にはしないが出来れば『死んで欲しい』と思っている。
「鉛玉を食らって、地獄に落ちれば良いんだわっ」
想いの限りを口にしていた。表情も口調に負けずあからさまだ。
驚いた千絵は、今度は富沢部長と高田部長を交互に見る。こいつ等に『チームワーク』というものは存在しないのだろうか。大丈夫なのか?
「ひどぉい。ちゃんと聞こえてますけどぉ?」
そんなことを言われても『慣れっこ』なのか笑っている。
「あら、何のことかしらぁ? 空耳じゃないかしらぁ?」
聞こえるように言っておきながらすっとぼける。
二人は昔から仲が悪い。今は二人共同じ『部長』であるが、高田部長が『課長』、富沢部長が『新人』の頃からずっとだ。
ことある毎に高田部長が『やらせろ』と言い続けるものだから、凄くウンザリしていたのだ。趣味の『仲人』を。
「おい、ボケ茄子! お前もだよっ! 早く来いっ!」
「えっ? 本部さん私もですかぁ? 忙しいのですがぁ」
振り返ったのは大佐だ。またまた千絵は驚く。はぁ?
「馬鹿野郎っ! 作戦中は『コードネーム』で呼べっ!」
「いてぇっ、すいません。かぁぁ、いってぇぇっ」
「たく。このボケ茄子依井がっ。もぉ茄子に失礼だろっ謝れっ!」
「あああ、茄子さん、どうもすいませんでしたっ」「しょうがねぇ」
頭を下げる大佐の姿に、千絵は驚いていた。
今度は頭を殴られても、気絶せず耐え抜いたことに。




