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アンダーグラウンド掃討作戦(三百十五)

 右手を下から突き上げるように89式を叩く。すると少し持ち上がった。何故かきよピコも軽くジャンプ。謎の行動だ。

「は、早く持って行こうぜっ」「お前が先頭だろうよぉ」

 言われて気が付くそうでした。俺が先頭でしたとな。

 たなっちは山岸少尉の行為を見ていない。もちろんジャンプもしていない。足元だけを気を付けている。


「これ以上、頭ぶつけんなよ?」「判ってますってぇ」

 角を曲がるときに山岸少尉から注意。たなっちが振り返って答える。きよピコは手元が多少狂っても気にしないのだろう。

 振り返って進行方向を見ながら、血塗られた本部の外へと向かう。

 本部の外では、ちょっとだけスッキリした兵士が待ち構えていた。


「ご苦労さまです」「ここから先は我々が」「お任せください」

 寄ってたかって鮫島少尉に掴み掛かる。先ずは二人がきよピコが持っていた右足と左足を一本づつ奪う。

 あえなくきよピコは『生体運び』から失業だ。肩を竦めている。

 続いて上半身は三人掛かり。右手と左手とご丁寧に頭だけ持つ者が現れて、たなっちも失業である。

 鮫島少尉は『大人気』らしい。ちょっと悔しいではないか。


「病院に連れて行っても良いでありますか?」

 装甲車を指さして聞いて来た。ドアを開けようとしているし、『乗せて行きましょう』なのだろう。

 すると山岸少尉は、仕方無さそうに両手を広げると肩を竦めた。


「こいつが『救急車』に見えるかい?」「いえ、見えませんが」

 兵士の顔が歪む。同じ士官として心配はしていないのだろうか。

 自分がさっき狙われていたのを忘れたのか? このまま見通しの良い所を運べば、鮫島少尉が撃たれてしまうではないか。


 しかし山岸少尉の表情は変わらない。答えは『否』である。

 こいつらの考えはお見通しだ。鮫島少尉の搬送にかこつけて、安全が担保された装甲車で戦線離脱するつもりに違いない。

 目が泳いでいるし、装甲車と山岸少尉を交互に見続けている。恐怖も焦りも滲み出てむしろ哀れ。そんな目をしていてはダメだ。


『こんな所、一刻も早く逃げ出したい』

 そんな想いが丸判りではないか。許される訳がない。

 山岸少尉は大きく息を吸った。


「逃げ出したいなら走って行けっ! この根性無しめっ!」

 その場に居合わせた兵士全員がビシっと姿勢を正す。

「鮫島少尉は、お前らにそんなことを期待していたのかぁ?」

 グルリと見渡すが、当然のように反論する者は皆無。


「動けない者は置いて行くっ! 動ける者は俺に付いて来いっ!」

 より大きな声で叫んでいた。しかし、まだまだ迷いはあるようだ。

「良いか? 戦況が不利になったからと言って、コソコソ逃げ出すことは、この山岸が許さんっ! 全員銃を持って前進せよっ!」

 演説をぶち撒けると、兵士達が互いに顔を見合わせ始める。


「機械なんかに、俺達は負けないっ! 俺達は機械より強いっ!」

 ドンと胸を叩く。きっと『気持ち』では負けないつもりなのだろう。しかし訓練では、全員が『死亡判定』となったのを忘れてしまったのだろうか。山岸少尉が真っ先に逝ってしまったザコなのだが。

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