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アンダーグラウンド掃討作戦(三百十二)

 空中へ投げ出したはずの手袋が思ったよりも早く地面へ。

 山岸少尉は更に加速した。山なりのカーブを描いたはずの手袋が、ヒュンと左へと曲がったことになる。しかも、かなりの角度で地面に叩き付けられたではないか。明らかに物理法則を無視している。

 かなりの高さから狙っていると判った。今はそれだけ判れば良い。


 山岸少尉は走りながらも、冷静に思考を巡らせ始めていた。

 何人も兵士が居たはずなのに、『少尉』が現れた瞬間にコレだ。

 きっと敵のスナイパーは軍経験者か、階級章マニア。スコープを覗きながら、指揮官と思しき者を選別して狙っているのだろう。

 かなり出来る奴だ。何しろ、現れたばかりの『全権少尉』を、迷うことなく真っ先に狙って来た。きっと最初の『砂埃』もそうだ。

 あそこで怒りを露わにしていなかったら、今頃、命はなかった。


 そこまで考えて『元本部』の陰に滑り込む。

 するとそこには、大勢の『先客』が屯していた。何だ。全滅かと思いきや、まだ生きとし生ける者がいるではないか。


「全権の山岸だっ」「はっ!」「ご苦労さまです! 山岸少尉っ!」

 威厳を保つためだけに大声で怒鳴り散らすと、全員が敬礼した。

 快感である。これだから士官は止められない。山岸少尉は、ニヤニヤするのを堪えるように頷いた。引き続き怒鳴り散らす。


「鮫島少尉はどうしたのかね?」「それがぁ」「ちょっとぉ」

 どうもパッとしない。敬礼を解いた手をおずおずと降ろし、語尾が弱くなった口調でチラチラと横目。何だ。どうした?

 何人かは口を手で塞ぎ、奥へ走って行ってしまったではないか。


「生きていないのか、死んだのかっ! ハッキリしろっ!」

 そこ重要。凄く重要。だから、兵士が驚いているのも判る。

 まるで『そんな風に言わなくても』とたしなめようにも、それが出来ないもどかしさ。『生きていて欲しくない』その気持ちは判る。


 しかし軍人たる者、死を覚悟していない者などいないはずだ。

 認めたくない過ちでも認めざるを得ないように、屍と化したライバルの姿を直視したい気持ち。それが抑えられないこともある。

 それが軍人。特別な訓練を受けていない君達には判らんだろう。


「この中にるのですが……」「凄い状況でして……」

 ピンと来た。見れば、本部に使用していたバス型の装甲車は、穴だらけではないか。まるで、重機関銃で襲われたような大きな穴が。

 だとしたら、こっちのもっと大きい穴は?

 外側から内側に向けて鉄板がグニャリと曲がって? それが、三十センチもあろうかと思われる。どんな勢いだよ。そう。俺達が率いて来た機械化軍団の『腕の太さ』と、ピッタリ合うような。


「少尉殿ぉ。大丈夫ですかぁ?」「何か狙われてましたよねぇ」

 たなっちときよピコもやって来ていた。その後ろからは、田中軍曹が装甲車を横付けして止まる。エンジンは掛けたままだ。

 運転席から『鮫島の野郎、この中じゃないですか?』と叫んでいる。全然聞こえないが、態度と口振りと、それに良く知らんけど、普段の言動からしてそうに違いない。山岸少尉はそう決め付けた。


「良し判った。後は『俺達』に任せて置け」「お願いします」

「おい、『救出』に行くぞっ」「はーい」「OKでぇっすぅ」

 二人共良い返事だ。俺達が『一枚上』って所を見せてゲロゲロー。

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