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アンダーグラウンド掃討作戦(三百十一)

 陸軍が設置した本部は意外にも近かった。それもそのはず。

 山岸少尉が決めた『勝手本部』は小学校跡。陸軍が設置した『正式な本部』は中学校跡。どちらも同じ学区内だ。驚くことではない。

 しかし、本部に残されていた兵士達にとって、裏口から突然現れた山岸少尉の部隊に驚いていた。


 先頭の装甲車は見覚えがある。陸軍で間違いない。

 しかし、その後に続いてやってきた『機械化軍団』には、見覚えがあり過ぎたのだ。しかも今度は、三倍に強化された『隊長機』が先頭に見えるではないか。


 驚いたのはそれだけではない。さっきは『数機』だった。それでも死者多数の被害が出てしまったのに。

 今度は何機だか判らないではないか。一体何機来るのか。

 もしかして今頃、完全に取り囲まれている? そう錯覚する程の数。もう数える暇があったら、逃げ出したい気分だ。


 だから驚きの余り、その場で腰を抜かす者が続出。奴らはもう『死を覚悟した』と言うより『生きるのを諦めた』と言って良い。

 戦死した仲間の遺体を運んでいたのに、それを放り出して逃げ出す輩まで。残骸となってしまった車両の陰に隠れている始末だ。

 だらしない。実にだらしないではないか。貴様ら、それでも栄えある帝国軍人なのか? 指揮官出て来いっ! 根性叩き直してやる。


「よいしょっとぉ。おぉおぉ。随分やられているなぁ」

 掴んでいた隊長機から手を離し、山岸少尉は堂々と歩き出す。

 いつの間にか『革の手袋』なんて物を着用していたようだ。

 辺りを見回しながら、手袋をポンポンと叩きながら外す。すると、物陰に隠れていた兵士達が急いで飛び出して来る。

 士官だ。士官が来た! 苦境に陥った我々を救い、この不利な状況を打開し、この戦争を勝利へと導く陸軍士官が! 希望の星が!


 山岸少尉は心の中で詳細に情景を描いていたが、実際とはかなり違う。物陰に隠れている奴らは、目が悪いか鳥目に違いない。

 名前は知らなくとも、この『階級章が目に入らぬか』である。

 我は少尉。しかも大佐より『全権を委譲』された、とびきり優秀な少尉である。まだ知らないだろうから、これから教えてやろう。


「山岸少尉だっ!」『だっ!』『だっ!』『だっ!』

 周りを見渡しながら少し溜める。大声が鳴り止むのを待っていた。


「この度ぃ、大佐から全権をぉ」「少尉殿っ! そこは危ないっ!」

 話の途中で割り込まれてしまった。しかし、大声を出していた本人には良く聞こえなかったようだ。正に『話の腰を折られた形』となってしまい、『んぐぐっ』と喉を詰まらせる。


「この度ぃ」「危ないですよっ!」「なんだっ、誰だ出て来いっ!」

 言い直して直ぐにこれだ。思わず『ズルッ』とコケてしまった。

 すると目の前に『土埃が舞った』みたいだが、小さいことは気にしない。それより今は『演説の邪魔をする犯人』を見つけることだ。

 しかし最近の陸軍は、まともな教育が出来ていないらしい。士官様が『出て来い』と言っているのに、誰も出て来ないではないか。

 両手を腰に当てて、睨みを利かせてみるがそれでも出て来ない。


「スナイパーに狙われてますよっ!」「逃げて下さいっ!」

 今度は良く聞こえた。山岸少尉は手袋を放り投げて走り出す。

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