アンダーグラウンド掃討作戦(三百七)
「こちらCCC。誰か聞こえますか。CQ! CQ!」
千絵による悲痛な呼び掛けが続いている。
コールサインのCCCとは『セントラル・コントロール・センター』の略で、今居る秋葉原の本部のことだ。
NJSの『薄荷乃部屋』に陣取った陸軍が作戦発動と共に命名した名称である。隣の朱美は今、初めて知った。
まぁ、陸軍の作戦報告書に『薄荷乃部屋』と記載する訳にも行かないだろう。
すると突然、CCCに雑音が響き渡る。
『ザザザッザザッ……少尉殿ぉ、なんか無線が入ってまッザザッ』
間抜けな声。しかし全員が上を向いて静かになった。
千絵だけが下を向き、捉えた電波の周波数帯から『誰の部隊なのか』を調べている。勿論『少尉』の部隊だ。
すると応答だろうか。聞こえて来た声はダルそう。しかも少し遠くからのようで声が小さめだ。良く聞こえない。
『ザザッだよきよピコぉ。うるせーから、そんなの切ってザザーッ』
「誰の隊だっ! 名前を階級を言えっ!」
静かになっていたCCCに、大佐の怒号が響いた。
本部長に何度も眠らされているとは言え、そこは流石の大佐。階級にものを言わせるときは迫力がある。
しかしその後は『シーン』となって沈黙が続く。あれ?
あれ? あれあれ? さっきのは、木の精・山の精・谷の精か?
『あー、CCC、聞こえますかぁ? 無線が不安定でありましてぇ』
「おぉぉ、連絡が取れたぞぉ」「千絵良かったねぇ」
安堵の空気が流れる。朱美も千絵の肩を優しく叩いて慰める。千絵は小さな声で礼を言う。
借りていたハンカチで鼻を拭き、朱美に返そうとしたのだが『まだ使え』とばかりに握らされてしまった。再び頭を垂れる。
聞こえていた少尉は、怒号が『大佐の叱責』だと判ったのだろう。
会社に例えれば『部長の呼び出しを食らった若手の主任』と言った感じだろうか。それも『仕事中に遊んでいた』ときにだ。
いや、『誰』少尉か判らないので、必ずしも『遊んでいた』とは限らないので、その決め付けは済まなかった。反省。でもあれよ?
会社で『スマホゲーム』やってんのがバレたのと同じ感じよ?
『こちら、山岸少尉の隊であります。CCCどうぞ』
「山岸君か! 良くぞ生きていてくれた!」『その声は大佐ですね』
「そうだ。CCCからだ」『はい』「連絡が遅かったではないかね?」
『あぁ、ちょっと、安全地帯を探しておりましてぇ』「そうか」
『はい。何しろここは『危険地帯』ですからぁ』「実はそうなんだ」
『えっ?』「えって、ええっ?」『あぁ、ですよねぇ。はいはい』
「本部がやられて復旧作業中に、第一中継所が壊滅した」『はぁ』
「だから現在、全機が『フリーモード』になっておる。注意せよ」
『あぁ? はいはい。フリーですねぇ。判ってます。はい了解です』
「君は随分落ち着いて居るんだなぁ。感心するよ」
『自分、こういうの慣れてますからぁ』「おぉ、頼もしいなぁ」
『何でも任せて下さい!』「他に誰かいるか?」『私の隊だけです』
「では本部に行って、指揮を執りたまえ。状況が判ったら報告せよ」




