アンダーグラウンド掃討作戦(三百三)
「第一中継所、応答ありません! 三秒前から表示します」
「なっ、なんだとぉっ! 本部の次はそこかっ!」
千絵の報告に大佐が思わず立ち上がる。すかさず、スクリーンの地図が『作戦範囲の全体』に切り替わった。
そこには機械化軍団の位置が表示がされ、刻々と動き続けている。
母機となる『自動警備一五型』と、その背中に搭載された子機の『調和型無人飛行体』だ。
ちょっと数は多いのだが全部表示されていて、戦闘の激しい地域が一目瞭然だ。現在は蔵前橋通りの北側沿いに部隊が集結している。
母機は『□』で子機は『○』だ。中継所は『△』である。
緑色は『正常』で黄色は『警告』を表す。何れも『戦闘中』を表しておりその証拠に高速移動中。ちなみに数字は『キル数』だ。
当然子機の方が多く、動きも速い。『バッテリー切れ』か『弾切れ』になると黄緑になり、やがて黄色に落ち着く。
蔵前橋通り沿いには、黄色くなった『○』が沢山留まっている。
一方の動かない黒色は『故障』。きっと『最後の雄叫び』を上げた所だろう。『■』は兎も角、『●』がいつまでもそこにあるとは保証致しかねるが。とりあえず『救難信号代り』位にはなるだろう。
色別の詳しい紹介は『スクリーンの右下』に表示されているが、誰もそっちは見ていない。大きく表示されたデジタル時計に注目だ。
どうやら三秒前の状態か。そこからカウントダウンが始まった。
全員が注目していたのは、第一中継所を表す緑色の『△』だ。
「消失⁈ だとっ!」「完全に信号が停止しました。予備もです」
確かにスクリーン上の第一中継所は『▲』となっていた。
誰がどう見ても『真っ黒』である。いきなり『機能停止』することなどあり得ない。あってはならないのだ。
そもそも信頼性の高い機器を採用しているし、予備のアンテナだってあったはず。しかも、最前線から離れた後方だと言うのに。
第一中継所は各中継所と本部を繋ぐ、重要な『中継地』である。
ここがダウンしてしまったら、一体どうなってしまうのか。
大佐は首元を擦りながら、スクリーンに注目する。
すると、第一中継所から近い表示が赤色に変わっていく。
あっと言う間にどんどん広がって行き、スクリーン上にある全ての記号が赤色に染まった。しかし動きは『相変わらず』である。
「赤は何を表すのかね?」「老眼かっ! 判例を見ろっ」「いてっ」
本部長に頭をチョップされた大佐は、首を竦めながらスクリーンの方に向き直った。目をショボショボさせて。
実は老眼らしい。だとしたら後頭部の『首元』を押さえていたのは『目のツボ』だろうか。はいはい。もっと押さえて押さえて。
「『フリーモード』って何だね?」「説明書を読めっ!」
今度は高田部長に小突かれてしまった。慌ててディスプレイの『ヘルプ』を開いて用語を調べ始める。
しかし高田部長も人が悪い。元からか。天井に叫べば人工知能三号機が、直ぐに教えてくれるのに。
「『無差別殺人モード。動くものなら何でも』って。おいおいっ!」
「何を慌てている」「そうですよ。今までと、何ら変わりませんよ」
開発者の二人に真顔で言われてしまっては、大佐だって面食らう。




