アンダーグラウンド掃討作戦(三百一)
「少尉殿ぉ、これ、カッコイイですねぇ」「良いよなぁ」
呼び寄せられた自動警備一五型は、確かに他のとは違う。何しろ肩に『オプション』が付いているからだ。
ビヨーンと伸びた筒。それが勿論『只の筒』なんてことはなく、『グレネードランチャー』である。
本体のAIが敵と使い所を判断して、自動で発射するのが通常の使用方法だ。でもそれは、当然のようにストップしてある。
何故なら追加用の『グレネード』が、何処にも見当たらなかったからだ。結構探したのに残念。きっと『ケチった』のだろう。
いや、それは違うのだが。山岸少尉は知る由もない。
ちゃんと『使い所』を精査すれば、そんなに『パカスカ』と放り込む物ではないからだ。忘れてはいけない。
アンダーグラウンドとは言え、ここが『東京』であることを。
「良いだろぉ」「俺にもやらせて下さいよぉ」「ちょ、ずるいぞぉ」
のんきなきよピコのお願いを聞いて、たなっちも割り込んで来たのだが、山岸少尉はその両方をサラリと受け流す。
もう手元のコンソールを操作して、照準も設定したようだ。
「じゃぁ、早速ぶち込んじゃおうかなっ! 見てろよぉっ」
「ぶっ潰せぇっ!」「イエーイ! 俺達最強ぉぉっ!」
戦場であることも忘れて、誰とも言わぬが騒いでいる奴が二人。
田中軍曹だけは冷静に周りを警戒し続けていた。もしかして、耳を塞いでいるから『悪ノリ』も聞こえなかったのだろうか。
『ポンッ!』『ポンッ!』『ポンッ!』「うわっ、うるせぇっ!」
「いったぁぁっ スゲェ三発!」「おぉっ! 良い感じだぁっ!」
手で耳を塞いでいても、当然音は聞こえたのだろう。田中軍曹がしかめっ面で振り返った。
パッと見、発射されたグレネードを目で追うことはできないが、狙いが外れることも無いだろう。AIは優秀なのだ。
多少風が強くてもドンピシャで当てて来る。つまり『狙われた』ら、その時点で終わりだ。先に『ナムナム』しておこう。
『ドガーンッ!』『ドガーンッ!』『ドガーンッ!』
三発とも命中し、廃墟のビルは本当の意味で廃墟になった。
一番手前に見えていた壁が崩れ落ち、『内覧』が可能な状態。
勿論見えているのは家具ではなく、崩れ落ちた壁が床を覆っている。後から後から細かい物が『パラパラ』落ちている状況。
無事『敵の秘密基地』は破壊されたようだ。
「じゃぁ次、俺にもやらせて下さいよぉ」「おぉ。撃ってみるか?」
意外にも山岸少尉は、コンソール画面をきよピコの前に差し出したではないか。これには思わず、きよピコの目が輝く。
するとたなっちも、堪らず割り込んで来る。
「えぇっ! だからズルいっすよぉ!」
「なっ? 少尉殿は俺に『良い』って言ったんだよ!」
「きよピコ、お前ずっと勝手なことしてたじゃねぇかよぉ」
「何をだよ。俺が先陣を切って行ってやってたんじゃねぇかよぉ」
喧嘩を始めそうになっているが、山岸少尉は『しょうがねぇな』な目、生暖かい目で見ているだけだ。そこへ、突然の轟音が響く。
『ガラガラガラッ! ドォォォォンッ!』「あぁっ!」「んんっ!」
「あらぁ。崩れちまったなぁ。じゃぁ、攻撃は終了なっ!」
「たなっちが割り込んで来るからだぞぉっ!」「何だとぉっ!」




