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アンダーグラウンド掃討作戦(二百九十九)

 アンダーグラウンドにも猫はいる。ネズミを求めて迷い込んだのだろうか。工事現場から射し込む遮光が猫の瞳を照らす。

 キラリと光った鋭い目。一点を見つめたまま忍び寄る。ゆっくりと一歩。また一歩。どうやら獲物を見つけたようだ。

 久し振りの獲物なのだろう。喉も鳴らさず慎重に進む。


『ガタンッ! ガタンッ! ガタン!』『ゴン! カラーン!』

 突然機械化軍団が現れて猫は走り去る。脱兎の勢いだ。猫だけど。

 甲高い音は『一斗缶』を蹴散らした音。大きな音の割に、行軍に何ら影響はない。何だったら『ドラム缶』でも大丈夫だ。


「きよピコッ、静かに走れよっ!」「なにぃ? 音楽掛けろよぉ?」

 話が噛み合っていない。困った奴だ。

 先行するきよピコ隊は、『同じ行軍プログラム』を使っている筈なのに動きが荒い。さっきから蛇行を繰り返しているのだ。

 実に『楽しそう』ではあるのだが、行軍に『楽しさ』は要らない。


 それを追い掛けるのはたなっち隊。こちらは割と整然と走る。

 きよピコと張り合うように競争を始めてしまったのだが、過去を顧みないきよピコ隊を追い掛けるのは思ったより大変だ。


「止まれっ! この辺じゃないのかぁ?」「きよピコ止まれぇっ!」

 後ろから聞こえた山岸少尉の声に、たなっちが反応した。

 独断先行するきよピコを大声で呼んだのだが、振り返っただけ。そのまま行ってしまった。どんどん離れて行く。

 無駄に『命令違反』はしたくないので、たなっち隊は止まる。


 直ぐに自動警備一五型イチゴちゃんから飛び降りて、山岸少尉の元へ向かう。山岸少尉は『隊長機』に騎乗だ。凄く目立つ。

 騎乗と言ってもサイドに掴まっている感じなので、自由なのは片手だけ。その自由な片手を左右に振っている。

 確かに『止まれ』の合図だ。たなっちが小走りで駆け付けると、山岸少尉は手を振るのを止めて遠くを指さした。


「ここが『蔵前橋通り』じゃないのか?」

「えっ? あぁ、そうかも?」「何だよ『そうかも』ってぇ」

 頼りない部下を持って、山岸少尉も苦労する。しかし『人選』は自らの筈なので、結局は自己責任の範疇だ。

 そういうときは『苦笑い』で誤魔化すしかあるまい。たなっちも苦笑いだし、最後に追い付いた田中軍曹も苦笑いで合流だ。


「ここが『蔵前』ですかぁ?」「判んないってよぉ」「ありゃぁ」

 頼りない奴らだ。それもその筈。山岸少尉が率いる『遊撃隊』は、作戦範囲を逸脱して『北斎通り』まで行ってしまったのだ。

 慌てて引き返して来たと言う訳なのだが、帰り道は違う道。お陰で迷った挙句に、現在地まで見失う失態を犯している。救えない奴。


 すると『あらぬ方向』から、元凶のきよピコ隊が現れた。

 どうやら『後進』するのではなく、『左へ左へ左へ』と三回曲がって元の場所に戻るのがポリシーらしい。満面の笑みだ。


「どうしたんですかぁ?」「お前、何処行ってたんだよぉ」

 山岸少尉に叱られて、きよピコは『ペロッ』と舌を出す。全然反省している様子は伺えないが、さっき居た場所を指さした。


「こっちの道、繋がってるんですねぇ! 通れましたよぉ!」

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