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アンダーグラウンド掃討作戦(二百九十五)

「こっちだっ! 俺に付いて来い! こっちなら絶対安全だ!」

 当てずっぽうかもしれないが、更に分岐した横穴へと進む。

 不思議なことに、あれだけ文句を言っていた割には誰も反対しない。ゾロゾロと後に続くだけだ。何やら音が聞こえて来たのもある。


 キンキンと歯車が鳴る音だ。赤桐が急いでいたのも理由の一つ。

 今更ながら『ハーフボックスが来たらどうしよう』と、心配を始めても遅い。現実は目の前だ。もう走るしかない。

 進むべき方向へ向かって追い掛けて来るかもしれないが、この際『気休め』でも『言わされて』でも良い。赤桐の言葉を信じる。

 するとハーフボックスは、夢中で走る赤桐達の後方に。


「こっちに来るぞっ!」「前を見て走れ!」「下も見ろ!」

 飾り気のない武骨な通路に、男達の叫び声がこだまする。

 いやはや。そんなに『人が侵入する』のが有名な話なら、ハーフボックスに『安全装置』が付いていても良さそうなものなのだが。


 どうやら人間は『乗っている筈』という前提で、凝り固まっているようだ。既定路線通り、みるみる内に近付いて来るではないか。

 鳴り続ける歯車の音が、まるで『断末魔の叫び』にも聞こえなくなくなくなくなくなくなくはない。断末魔って誰や。知らんけど。


「待てっ! こっちは縦穴だっ!」「うわっ止まるなよっ!」

 先頭を走る赤桐が急停止したので、前から三番目と四番目を走っていた赤右と赤左が左右へと別れる。いや、二人共右だ。

 先頭の赤桐は『おっとっと』となっていたが、ギリギリの所で耐えていた。足先は横穴の淵にある。しかし頭は縦穴の中だ。


『キリキリキリキリッ! ブゥゥゥン!』

 その鼻先三ミリの所を、下から来たハーフボックスが通過する。

 暗闇から突然現れて、何も考える暇などなかった。『もしもぶつかっていたら』なんて、想像したくもない。碌でもないからだ。

 きっと『走馬灯』を拝むことも無く、一瞬で逝く。後は『無縁仏』となって、誰から拝まれることも無い。法事のご馳走も無し。


「早く来いっ!」「ダーーッシュッ!」

 踵を返した赤桐が見た物。それは正面から迫りくる鉄板だった。

 正確には『ハーフボックス』であろう。しかし、見えているのは『それの一面』だけで、『全ての面』を捉えている訳ではない。

 物事の一面だけを切り取って、『判ったつもり』になるのは自戒しなければならない。かと言って『下の面』を体感したくもない。

 仲間が待つ横穴へと飛び込んだとき、右足の先三ミクロンの所をハーフボックスが通過して行った。足があるのが奇跡。


「どっちに来るか『掛け』だったのか?」

 息も荒く倒れ込んでいる赤桐に、苦笑いで声を掛けたのは赤味だ。

 もう少しで赤桐を『縦穴』へと押し込む所だった。助かったのだから、赤桐も怒ってはいない。笑っているではないか。


「あれだけの速度で突っ走ってたら、曲がれる訳ないべぇ?」

「それもそうだな」「流石専門家」「冷静だなぁ」「勘は悪いけど」

 最後の一言も含め、和やかな雰囲気になっていた。だから、赤桐による赤上へのパンチも『ゆるり』とだ。痛くはないだろう。


「おい、もうココから出ようぜ! これ、『扉』だよなぁ?」

 赤里が縦に一本『切れ目』が入った壁を指さして、振り返った。

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