表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/1519

アンダーグラウンド(八)

「バーン!」

 黒田が悪戯っぽい顔で、右手を拳銃の形にして弾く。

 黒井は動かない。顔を強張らせて、そのままだ。固まっている。そんな様子を笑顔で眺めながら、黒井はトラックの荷台から降りる。


「よいしょっとー」

 足元に気を付けて降り、トコトコと黒井の隣にやって来た。黒井は横目に黒田を見る。

「だ、大丈夫、ですよね?」

 隣に立った黒田を見て、黒井が聞く。汗が流れ落ちている。


「いや、ダメだと思うよぉ」

 そう言って、黒井を見て笑った。黒田は両手を挙げることもなく、笑顔で黒井と、ASー15(イチゴちゃん)を交互に見ている。

 黒井はそんな黒田の様子を横目に見て、これは絶対、からかわれていると、確信した。念のため、もう一度聞く。


「だって、黒田さん、平気じゃないですか!」

 言われた黒田が、「あ、気が付いた?」という顔をしたので、黒井は肩の力を抜き、両手を下げる。そして黒田の方を向く。


『ケイコク! ウゴクナ!』


 目が光った。黒井は驚いてASー15(イチゴちゃん)を凝視した。恐怖の余り、一歩後ずさりすると、追随して向こうも少し前に出た物だから、黒井は観念する。

 悟った。完全に、『る気じゃないか!』

 再び黒井は気を付けの姿勢になり、両手を手をあげた。


『テヲアゲロ!』


 黒井の方が早かった。それを見て、黒田が笑う。黒井は混乱していた、何故黒田は、平気なのか。


 そんなことを思っていると、黒田がポケットからキーを取り出した。見覚えがある。河原でチラっと見せた、あれだ。

「停止!」

 黒田がそれをASー15(イチゴちゃん)に向けてボタンを押すと、光る目が段々と消灯してゆく。


「大丈夫ですか?」

 もう一度黒井は、黒田に確認する。黒田は相変わらずだ。

「うん。大丈夫だよ」

 そう言って、キーをポケットにしまった。しかし黒井は、黒田を信用できない。絶対に、まだ何かを隠し持っている。

 現に、ポケットから、手を出さないでいる。怪しいよ。


「なーんちゃって! てのは、無しですよ?」

 強めの口調。そう言われた黒田は、「あ、バレた?」という顔をしたではないか! 黒井は、いい加減にして欲しかった。

「ちょっと、黒田さん!」

 段々腕が痛くなってきた。マジで、冗談はやめて欲しい。


「大丈夫だって。何なら、俺が盾になってやろうか?」

 そこまで言われて、黒井は確信する。今度こそ、大丈夫なんだろうと。黒田の目は真剣だ。

 が、しかし、思う。良く見ろ。あんなでっかい銃にぶち抜かれたら、黒田なんて、盾にもならないだろう。

 それでも、黒田がポケットから手を出し、顔の横で左右に回転させている。幼稚園児の遊戯かっ! 

 黒井は溜息を吐いて、腕を降ろした。その時だ。


 再びダンボールが、宙を舞う。『バーン!』という乾いた音がして、見覚えのあり過ぎる金属の棒が二本、その中から現れる。

 いや、棒じゃない。腕だ。黒井は思わず、右足を後ろに引き、左手を顔の前に出して、防御姿勢を取る。

 そんな姿勢が、何の役にも立たないことは、十分理解しているつもりだ。直ぐに両手を挙げ、それを凝視して、隣を見る。

 にやけている黒田を、怒りと共に睨み付けた。


『ブラック・ゼロヘ、ヨウコソ!』


「二機でしたぁー。こっちはね、ちゃんと武装してるの!」

 黒田が、凄く嬉しそうにしている。黒井はぶん殴ろうと思って、右手を握りしめる。が、辛うじて黒田の言葉を理解した。


「え? マジ? ちょっと!」

 絶対コイツ、ぶん殴る! 黒井は、手を挙げたまま決意した。しかし黒田は、そんな気配を感じたのか、にこにこしながら黒井を置いて、歩き出す。

「えっ! どこ行くの! 黒田さん! ちょっと! じじいぃ!」


 黒田は、黒井と打ち解けたと思ったのか、「ヒヒヒ」と笑って、黒田を指さすだけだ。


「くっそじじぃっ! 戻って来いよっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ