アンダーグラウンド掃討作戦(二百八十四)
情報処理とは何なのか。『情報』を『処理』するのだろう。
では、その『情報』とは何か。更にそれを『処理』するとは?
かなり曖昧な表現である。『1』と『0』で表すとしたならば、それは『1』になるとだけは言えるだろう。意味判らんが。
つまり『何でも』である。『あらゆる情報』を『どんな処理』でもする部署が『情報処理課』なのだ。少なくともNJSに於いては。
例えると、『生きていた証』という情報を『最初から居なかった』ようにする処理なんてのは『通常業務』の内だ。課員全員が可能。
すると『ヌンチャク』を持って小走りになっている女子社員を始め、『鞭』『水鉄砲』『掃除機』『お風呂のアヒル』を握り締めて立ち上がった社員達も同様だ。証左として目がイっちゃっている。
ん? 『お風呂のアヒル』は随分デカいが、どうするんだ?
漏れ出る殺気を敏感に感じ取り、異変に気が付いていた。プロだ。
自席での『リモート会議』は放置して、当然のように打ち切り。
先程、いつもとは違う『兆候』は感じ取っていた。アンダーグラウンドの守衛所から、情報処理課のスピーカーに連絡があったのだ。
今頃は『ジャンケンで負けた奴』が処理に向かっているだろう。
残念。彼らは中途半端に『処理』の方だけを、受け持ってしまったらしい。恨むならもっと強い『ジャンケンAI』を育てることだ。
先頭を行く女子社員は、情報処理課に配属三年目の若手である。
彼女は『実績』が欲しかった。本部長に新兵器のプレゼンをして、通った試しがない。机の中は『ボツ作品』で一杯だ。
今手にしている『ヌンチャク』は、『アイディアは良い』と評価を貰ったものの、あれこれ理由を付けて『ボツ』になってしまった一品である。制作に心血を注いだのだ。『復活』を証明したい。
後に続く社員達も気持ちは同じ。手塩に掛けた『逸品』だと自負。
流石に『高田部長のように』とは行かないまでも、いずれ目指すはナンバーワンだ。惜しくも『ボツ』になってしまった『新兵器』を携えて『実績作り』に奔走するまで!
つまり、この上ない『敗者復活』のチャンスが到来!
今日は良き日。正に『二階からぼた餅』又は『棚から目薬』だ!
『バタン!』「フォォォォッ!」「うおぉぉっ!」「俺の獲物だ!」
廊下に響いた激しく開くドアの音。驚いて振り向く。すると見えて来たのは、正しくヌンチャクを振り回す女が! さっきの娘?
走りながら肩を経由したり腰を経由したりしているが、目だけは『獲物』を捕らえ続けているのか。M16など目に入ってはいない。
「アチョォォォッ!」「うわぁ! 何だぁっ!」「落ち着いてっ!」
奇声を上げて振り下ろされたヌンチャク。思わずM16で防ぐ。
するとヌンチャクの軌道が瞬時に変わり、一瞬見えたのは白いおみ足だ。短いスカートなのに、躊躇なく繰り出された足。
生パンツに見とれている間に、M16は弾き飛ばされていた。
それが前から後ろへと回って行く。一瞬の出来事であるが、随分と長いようにも感じる。回転する勢いで捲れ上がったスカートが、ふわりと降りて生パンツを隠した瞬間、右わき腹に激痛が走った。
「トォォォォッ!」「ぐふっ!」
あばら骨が完全に折れた。更にめり込む感触が。近くなった彼女の顔、そして優しく香る髪の匂い。目がイったままの恍惚の表情。
『ビリビリビリィィィ!』「うわあああああっ!」
そこに十万ボルトの電撃が走る。思わずのけ反っていた。




