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アンダーグラウンド掃討作戦(二百八十三)

『チーン!』「着いたぞっ」「非常階段を探せっ」「うっす!」

 エレベーターを降りると、そこはエレベーターホールだった。

 当たり前だが、その当たり前が少しだけ違う。

 着いた場所が『何階だか判らない』のだ。階数を表す表示は勿論、『部署』を表す表示も何もない『白い壁』である。焦げ目はない。

 ちょっとだけ面食らっていた。確かに受付嬢は『情報処理課』と言っていたが、それが『何階にあるか』とは言っていない。

 もう良い。だとしたら、ココが『情報処理課』なのだろう。

 レッド・ゼロは一斉にエレベーターホールへと飛び出した。


「おい! この『封印』取れないぞっ!」「ホントだっ」

 只のシールではなかったのか? さっきまで『グニャーン』となっていたのだが、それが『カッチカチ』に固まっている。

 爪で引っ掻いた位では、封印を解くことが出来ないではないか。


「ちくしょぉ! これじゃ『鉄の棒』じゃねぇかっ!」「かてぇぇ」

「大丈夫だ。見せないようにしていれば、素人には判んねぇよっ!」

「だな」「あぁ、無いよりマシだっ。散開! 非常階段を探せっ!」

 四人づつ左右に別れる。その先は左右に長い廊下が続く。

 更に二人づつに別れて『非常階段』を探す。きっと一番奥だろう。


 まだ『仕事中』なのか、廊下は誰も歩いていない。

 と、そこへ、一人の女子社員が歩いて来た。小柄な女性だ。

 手には何やら封筒を持っている。こちらに気が付いたのか、一瞬驚きの顔になって軽く会釈した。黒のストレートヘアが揺れる。


「お嬢さん、『情報処理課』って、どこぉ?」「案内して貰える?」

 M16を殊更見せびらかすように、努めて明るく聞く。

 勿論『安全装置に貼られた封印』は隠すようにだ。すると、流石に自動小銃を目の前にして驚いたのだろう。目を丸くした。

 口が明らかに『あわわ』になっている。

 両手で大事そうに抱えていた封筒から右手を離すと、うっかり落としてしまいそうな感じ。気の毒な位に怯えている。

 慌てて左手で持ち直すと、右手で奥の方を指さした。


「あっちの給湯室の前です!」「ありがとぉ」「今度食事でも?」

 黒髪を揺らしながら小走りに行ってしまった。

 後ろから撃たれたらと思ったのだろう。ちらっと振り返ったが、隊員が手を上げて挨拶したのを見て前を向く。加速し始めた。

「お前、なに飯に誘ってんだよ」「可愛いお姉ちゃんだったなぁ」

 二人は笑いながら『給湯室』を探す。いや、それは違う。

 探しているのはあくまでも『非常階段』である。


 二人が女子社員に『嘘』を聞いたのは間違いない。しかし、答えた女子社員も、実は『嘘』を教えたのだからどっちもどっちだ。

 女子社員の表情は『可愛いお姉ちゃんだった』の言葉通り、一変していた。それはまるで『獲物を見つけた』喜びに満ち溢れて。


 目がイっちゃってる。瞳孔がキュッと締まって完全に。

 口は半開きになって、白い歯が思いっきり見えている程の笑顔だ。

 それが、ドアを開けた瞬間、笑顔を必死に抑えるように堪える。

 駄目だ。抑えきれない。自分の机が遠い。口元を封筒で隠し、やっと自分の机に到着すると、口元を隠したまま机から『ヌンチャク』を取り出した。それを腕と体の間に隠したら、そっと封筒を置く。

 仕事をしている仲間と目を合わせないように、気配を殺して歩き始めた。その歩調が速くなった瞬間、社員達の目付きが変わる。

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