表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
929/1532

アンダーグラウンド掃討作戦(二百八十二)

「これ、『血』付いてませんか?」「開いたら直ぐにどぞー」

 聞いてもまともに答えやしない。セキュリティゲートは相変わらず動きが速い。シュっと開いて通り過ぎると、シュっと閉まる。

 結局黙々と全員が通過した。勿論、一人づつに決まっている。


 エレベーターホールに向かうと再び『ピッ』とやる機械があった。

 お姉さんのキャラクターが『入館証をかざして下さい』と読み取り装置を指し示している。流石に機械的なキャラクターだ。

 目が怖くなったり、バタフライナイフを振り回したりはしない。

 当然のように、誰が『ピッ』とやっても行先は『情報処理課』と表示され、後はエレベーターが来るのを待つばかりのようだ。


 このビルにやってきた『ハーフボックス』は、所謂『新型のエレベーター』である。ロープ吊り下げ式ではなく、歯車で上下する。

 上下ばかりでなく前後左右にも移動ができ、エレベーターホールにせり出して『垂直通路』を空けると、追い越しも可能。

 お陰で『一本の通路にエレベーターの籠が一つ』ということはなく、幾つもの『ボックス』が動いているという訳だ。


『ハーフボックス』は約一畳の大きさで、『フルボックス』は一坪の大きさである。そしてロープで吊り下げされている『普通のエレベーター』も、実は共存しているのが大きなビルの特徴だ。

 使用目的は主に『荷物用』であるが、まぁ大人数がまとまって移動するときに使用される。出番が無いときはビルの最上階で待機。

 シュルシュルと下に降りて来ると、ロープが通路を塞いでいるので、『ハーフボックス』はその部分を通過出来ない。

『チーン!』「おっ、エレベーターが来たぞ」「全員乗れそうだな」

 八人が同時に乗り込んだ。ドアが閉まると、直ぐに上昇を始める。


「受付のお姉ちゃん、怖かったなぁ。銃で全然驚かないしさぁ」

「馬鹿お前、危ねぇことすんなよ。死ぬかと思っただろうがぁ」

「えっ? 何でこっちが死ぬんだよ?」「見てなかったのかぁ?」

 受付嬢を銃で脅した奴は、周りの奴らに責められている。当然のように『全然?』と肩を竦めているではないか。呆れた奴だ。


「『火炎放射器』がさぁ、スタンバってたじゃねぇか」「マジィ?」

「お前、上を見なかったのかよぉ。前後にあっただろ」「うぞっ!」

「嘘じゃねぇよ」「あれさぁお姉さんが『ペダル』とか踏むんだよ」

「そしたら『ボォォォッ!』てなって、丸焦げよぉ」「こぉわっ!」

「さっきのゲートも『血のり』付いてたけどさぁ」「あったあった」

「受付の周りも『焦げている所』あったもんなぁ」「あったあった」

「マジかよ。良く見てんなぁ」「お前だけだよ!」「死ぬぅぞぉ?」

 無事に通過したから笑っていられるものの、受付嬢の『気分一つ』でどうなっていたか判ったのもじゃない。NJS。恐ろしい会社。


 しかし彼らは、本当に判っていなかったのも確かである。

 確かに誰かの予想通り、受付嬢の足元に『ペダル』はあった。

 それは『火炎放射器』を起動するものではなく、アンダーグラウンドへと落ちる『落とし穴』を開くためにものだ。

 受付前の床が『パカン』と開いて、三十メートル程自由落下することができる。大丈夫。どちらにしても命はないのだから。


『輝く明日を作るため。えぬじぇいえーす♪』

 エレベータ内には、小さな音で『社歌』が流れ続けている。

 勿論誰も歌えない訳だが、実はこれも『セキュリティ対策』の一環である。誰も歌わないと『情報処理課』へとまっしぐらだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ