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アンダーグラウンド掃討作戦(二百八十一)

 受付嬢の目が怖い。急に名前を呼ばれた赤元は何故か一歩前へ。

 直ぐに右手の人差し指で、左脇腹辺りを指される。赤元は『何もありません』と上着のポケットを叩いて見せた。『ねっ』と念押し。

 すると受付嬢は、小さく『フンッ』と鼻息。と同時に『上着の下。早く出せ』とばかりに、人差し指を上に曲げながら曲げた。

 手首のスナップを利かせながら。出すまで何度もだ。

 赤元は観念して上着を捲る。すると上着の下から革のホルダーに収納された『銃剣』が現れたではないか。何処で見分けたんだか。


「あれっ? いつの間にぃ? こんな所に銃剣がっ!」

 場を和ませようと冗談にしてみせたのだが、受付嬢の表情はピクリとも笑わない。余程規則に厳しいのだろう。

「きちんと装着して、カバーを付けて下さい。ホックも締めて」

 冷たく言い切ると、更にもう一つ『封印』を取り出した。

 赤元がホルダーから銃剣を取り出して、ガチャガチャ音を立てながらM16の銃口に取り付けている内に、受付嬢は更に声掛けする。


「赤味様、赤桐様もお持ちですよね。後、赤嶺様の、それは?」

 慌てたのは赤味、赤桐の二人だ。赤味はズボンの左足、靴下の中に挿していたし、赤桐は背中側の腰、ズボンに挿していた。

 いずれも受付嬢からは、見えない場所だったのにも関わらず。


「こ、これは『銃剣』じゃなくて、バタフライナイフです」

 上着のポケットに入れていたので、直ぐに判ったのだろう。

 いやいや。普通は判らん。最早『目の付け所』さえも判らん。

 カバーを付け、留めボタンに『封印』を貼っている所に、赤嶺がおずおずとバタフライナイフを差し出した。

 受付嬢は一瞥して『何だ玩具か』な目になる。どうやら『勘』が外れてしまったかのようだ。

 それでも確認するのも『仕事の内』なのか、残念そうに持った。


 突然片手でパチンを開いて、照明にかざして『刃の状態』を見ている。また小さく『フンッ』とあからさまに鼻息をした後は、目にも止まらぬ速さで逆手に持ち替えた。そのまま軽く左右に流す。

 そしてもう一度刃を照明にかざす。どう見ても『玩具』だ。

 再び軽く振り回し、最後は放り投げながらパチンと折り畳むと、純手に持ち直した。そのまま指先でクルクル回して赤嶺に返す。


「これは、そのままお持ちください」「えっ? 良いんですか?」

 確認すら聞いている素振りはない。『行け』の合図をしていたのに変なことを聞いたものだから、ピタッと止まる。


「捨てるのでしたらお預かりしますけど?」「いえいえ。結構です」

 赤嶺が慌てて断ると、『じゃぁ聞くなよ』な顔になる。

 どうやら『玩具』を手にしたのが相当ショックだったのか、まだ尾を引いているようだ。これ以上話し掛けたら溜息が出そう。

 ある意味、最初に来たときとは随分印象も変わってしまった受付嬢である。全員の封印を確認し、渋い顔で『ゲートへどうぞ』と案内をした後は、気持ちを切り替えたようだ。温和な顔に戻った。


「受け付けお済ですね。ココに『ピッ』とどうぞ」「お願いします」

 守衛からにっこり笑って案内され、一人目が『ピッ』とやる。

 途端に、物凄い勢いで扉が開く。しかし、その一瞬の内に見た。

 どうやら扉の縁が『ギザギザの歯』になっていて、一部が浅黒くなっている光景を。あれはどう見ても『血の跡』ではないだろうか。

「はいどうぞ。あっお客様、お・ひ・と・り・づ・つ。どうぞぉ」

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