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アンダーグラウンド掃討作戦(二百七十八)

 高田部長イーグルが手伝いもせず冷静でいたのには理由がある。

 朱美ミケ千絵チーの傍にまで行って、ヒョイと覗き込み、『オプション無いと大変だなぁ』と嫌みを言う。

 千絵チーから差し出された歌舞伎揚げを、一度断ったかと思ったら、指さしたのは後ろの席。大佐と本部長ペンギンだ。

 結局、歌舞伎揚げを三枚貰い、一枚を本部長ペンギンへ渡すと、大佐の分は見ている前で自分が食った。実に冷静だ。


 もちろん富沢部長ブラックスワンには『要らないよね』と念を押すのを忘れない。すると富沢部長ブラックスワン高田部長イーグルを忌々しい目で見ると、『ちっ』と聞こえるように舌打ちをするのであった。勿論、誰の心にも残らない。

 折角、千絵チーが食べ掛けを差し出したのに、それも受け取れないとは『悲惨』の一言。千絵チーがボリボリ食べる音を聞いて、お腹一杯になるが良い。


 ギトギトになった指を大佐の軍服で拭いて、向かったのは黒電話である。腹が減ったのだろうか。ぶら提げてある『メニュー』の中かから『蕎麦屋』をチョイス。

 それを見ながら、あたかも注文でもするかのようにふるまう。

 電話番号を見間違えて、三回間違える仕草も忘れない。


 そうかと思ったらこれだ。

『今日は遅くなる。うん。本部長ペンギンと一緒』

 何だ。家への電話か? だったら蕎麦屋のメニューとは一体。

 いやその前に、家の電話番号くらい、覚えておらんのかと。え?

『帰る家が何件もある』だと? 何だそりゃ。え?

『約束していたのが、どの家だったか忘れた』だと?

 こいつ最低だ。言わずもがなだが。ホント最低だ。

 嬉しそうな目をしやがって。


 全部フェイクだった。口振りは蕎麦屋向けだが、電話の相手は牧夫ホークである。誰も知らないが『ホットライン』なのだから。

『今出ました』「あぁ、もしもし青戸庵さんですかぁ?」

『今出ました』「かつ丼二つお願いしたいんですけどぉ」

『今出ました』「お前、いい加減にしろよぉ? 演技下手だなぁ」

 蕎麦屋の応対のシミュレートなんて、『今出ました』しか知らない牧夫ホークは、オウムのように繰り返すしかない。

 それより『来来亭』『SlowTime』『青戸庵』の中から、第一声で『青戸庵』を当てた推察力を……褒める訳がないか。


厨房ちゅうぼう、ちゃんとまわっているか?」

 小声で話し始めた。電話の向こうでは溜息混じりである。

『はい大丈夫です。裏では最初から全オプション起動してますから』

「そうだったな。でも『出汁データ』は、しっかり取れよ?」

『勿論です。そっちの表示も『良い感じ』になってますよね?』

「あぁ。問題ない。人鳥ペンギンもご機嫌で騙されている位だ」

 ちらっと振り返り、満足気な本部長ペンギンを見てほくそ笑む。再び電話の方に向き直った。すると、一瞬表情が曇る。


『そうそう。正面玄関にM16を持った一団が来てますよ?』

「何だぁ? アメリカ軍からの押し売りかぁ? 要らんぞって言え」

『違いますよぉ。日本人っぽい人達ですよぉ。来たら言いますけど』

「お前は人を『見かけ』で判断するのかぁ? もぉ良くない癖だぞ」

『いや、ちゃんと受付で記名して、『入館証』貰っていますからぁ』

「ほう。じゃぁ日本人で間違いないな」『どういう見分けなんすか』

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