表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
923/1533

アンダーグラウンド掃討作戦(二百七十六)

「誰だっ!」

 返事がない。約束の時間まで、あと二時間もあるのに。

 外はあちらこちらで戦闘中だ。だから、遅れるならまだしも、早く来ることなんて、あり得るのだろうか?


 無線男の方が受信機を放り投げ、拳銃を手にしていた。

 一方、酒瓶男の方はゆっくりとドアの前へ。無線男の方に目配せして、『ドアを開けたら撃て』の合図か。

 アイコンタクトが通じ頷いて銃を構える。両手でしっかりと持ち。


『開けろっ!』『OK!』

 顎で指示して通じた。撃鉄は引いてある。いつでも発砲可能だ。


『コツン、コツン』「誰だっ!」

 やはり返事がない。しかし、ドアを開けるのは中止する。

 二人共『異変』に気が付いていた。ドアを開けても無意味。『ノックはドアからじゃない』という事実だ。


 首を横に振りながら、ドア前から窓辺へとそっと移動する。

 無線男の方が遅れませながら、机に広げていた地図を『ガサガサッ』と音を立てながら引き寄せ、LEDランタンに被せた。

 聞き耳を立てていた酒瓶男が『うるせぇ』と振り返ったが、暗くなった室内に『なるほど』と納得し、気が済んだようだ。


 二人の思いは一つ。『ここは三階だぞ?』である。

 窓から侵入して来るとは考え辛い。だとしたらその辺の石を拾って、窓に当てているのだろう。

 さっきから響く『コツン』は、ガラスの代わりに打ち付けられている『板切れ』が鳴っている。ドアも板切れだから勘違いか。


 すると突然『ドンッ!』と、今度は巨石が勢い良く当たる音が!

 そして、板切れの間から外を覗き見ようとしていた酒瓶男が、腰を抜かしたようにひっくり返った。


「うわぁぁっ!」「何だっ!」『バァァン!』

 窓から『黒い物体』が飛び込んで来たからだ。二人が発した叫び声と、思わず無線男が放った銃声が重なる。

 全ては銃声で掻き消されたことだろう。続けてもう一発。


 しかし今度の銃声は、より激しい爆発音で掻き消された。


『ドゴォォォォン!』「うわ、やっべぇ。意外とデカい音だなぁ」

 廃ビルの三階に、惜しげもなく調和型無人飛行体ミントちゃんを突っ込ませた奴がいる。大爆発を起こして、当然全損だ。


「見て下さい少尉殿! 敵のアジトをフッ飛ばしてやりましたよ!」

 嬉しそうに焼け焦げた三階を指さしたのは、きよピコである。

 そこへ別の場所を探索していた山岸少尉と、音を聞きつけて慌てて飛んで来た田中軍曹が追い付いた。揃って見上げている。


「おぉ、やったなぁ。でかしたぞぉっ!」「えっへん♪」

 意気揚々と報告する姿は、少し離れた所で探索を続けるたなっちにも見えていた。思わず舌打ちして、手元の端末を操作する。

 きっと『ライバル心』を、くすぐるものがあったのだろう。更に追加して調和型無人飛行体ミントちゃんの飛行を開始した。

 電池の消耗を加味して、ちょっと抑えていたのが悔やまれる。


 だが、果たして突っ込ませたことに『意味があるのか』は、怪しい所だ。本人はそんなことを、気にもしていないようだが。

 きっと『新型の花火』程度の認識なのだろう。困ったものだ。


「少尉、この廃墟は『拠点』なのでしょうか? 情報はありません」

 田中軍曹が山岸少尉に確認しても、『さぁ』と首を傾げるだけだ。

 何故なら『山岸別動隊フリーダム』は、作戦区域外を爆走している最中なのだから。今は、何人たりとも止められない。


 明かりが点いていても、そこが『レッド・ゼロの拠点』とは限らない。が、逆も然り。もしも『拠点』だとしたら、お手柄だ。

 万が一『只の地下住居』かもしれないのだが、そもそも『こんな所に住んでいる輩』が、『只の一般人』とは言い難い。


「さぁ、しらねぇ」

 山岸少尉の冷徹とも言える返事に、田中軍曹は驚く。

 普段はそんなに冷たいお方ではないのに。実に見事なすっとぼけ。


「えっ、じゃぁどうします? 中、一応調べますぅ?」

 念のために聞く。もし『まずいこと』になっていたら、いつものように隠ぺいしなければならないし。


「だからぁ、『しらねぇ』って!」「あぁ。じゃぁ私も!」

 山岸少尉の顔は、『そもそも報告すんな』である。


「おい、きよピコぉ! 電池勿体ないから、プカプカを下げろっ!」

 それでも何かと理由を付けて、『ドゴォン』は回避したいらしい。

「たなっちぃ。プカプカ駄目だってぇ」「えぇ? まじでぇ?」

 間抜けな声が通りに響く。いやぁ、声を聞く限りは平和的だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ