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アンダーグラウンド掃討作戦(二百七十五)

 現在の戦況を見つめながら、酒瓶を持っていた男の方が呟く。

「何で皆、731って奴らの、世話にならないのかねぇ」

 すると無線男の方がニヤリと笑う。

「知らねぇよ。どうせ『ドンパチ』やりたいんだろ?」

 気が合ったのか、両方とも『やれやれ』だ。


「まぁ、俺は御免だね」「ぶっ」

 片耳に着けていた無線の受信機もろとも、両手を上にした。

 酒瓶男の方が思わず噴き出す。プーンと酒臭い息が広がる。


「何だよ。くっせぇなぁ」「お前、良く言うよ」「何がだよ」

 今度は互いに笑いを堪えている。手を横に振りながら。

「お前、ココに来たときは『本物の銃、撃ち放題だぜ』ってさぁ」

「あぁ。それなぁ」「そうだよ。バンバン撃ちまくってた癖にぃ」

 撃つ真似をしてやると、無線男も照れくさそうに笑う。

 そして、さっきのリボルバーをパッと取り出すと、嬉しそうに『撃つ仕草』をする。今度は発砲せずに我慢だ。弾が勿体ない。


「そりゃぁお前『練習』は良いけどさぁ、『実戦』はまずいって」

 シュルシュルと回して拳銃をホルスターに戻した。

 酒瓶男も同意したのか、深く頷く。


「俺も、一回だけ参加したけどさぁ、もう良いや」「だろぉ?」

 しみじみと人差し指を振りながら互いに確認する。酒瓶男は再び頭上で両手を組むと、椅子を後ろへと揺らし始めた。


「サバゲーと違ってさぁ、一回死んだら、終わりだしさぁ!」

 何だか言い方が素人っぽい。だから冗談なのか本気なのかの区別が付き辛いではないか。それにしても、無線男は呆れるばかりだ。


「当ったり前だろぉ? お前、知らないで参加したのかよぉ」

「いやぁ『こっちに来て』直ぐだったからさぁ、冗談かなぁと」

「俺だって同じだよ! 本物のM16貰って『マジか』って思った」

 言い方からして、二人は最近『別世界』からやってきたようだ。


「あれすんげぇ重いのなぁ?」「いや、俺はサバゲーやらねぇから」

「全然違うんだよ。重さが」「だから知らねぇって!」

「手榴弾もさぁ、重さといい、手触りといい、本物でビックリ!」

「実戦なんだから、当たり前だろ? 良く生きて帰って来たよ」

 笑いながら『初陣』のことを、互いに思い出しているようだ。

 酒瓶男の方がM16を頭の上に掲げた。実物はないから振りだ。


「結局、狙い何て定めないで、『ワアアアアアッ』て感じ」

「だっせぇ。何それ」「壁から顔出す勇気なんて、無えからっ!」

 そんなんで当たる訳も無い。斯く言う無線男も同じ穴の狢だ。

 まぁ、いくら『サバイバルゲームの経験者』と言っても、所詮『遊び』の範疇。経験の『けの字』にもならんと言うことだ。


「だからさぁ、731って奴らの、世話になれば良いのになぁ」

「ちょっと怪しいけどな。だって『同じ陸軍』なんだろぉ?」

「そうだけどさぁ『衣食住』付きって、お前『住』までだぜぇ?」

「逆にソコだよ。『日本国の人、大歓迎』ってさ、意味判るか?」

 聞かれても知る由もない。ただ笑うのみだ。


 すると二人の耳に『コツン』と小さな音が入る。誰か来た?

 二人は時計を見て『早い』と勘づく。慌てて立ち上った。

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