表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
920/1533

アンダーグラウンド掃討作戦(二百七十三)

 赤山は司令官の赤井が気に入らない。だからと言って『後ろから刺しちまうか』とまでは思わない。

 仮に司令官を決めるが『決闘』だったならば、迷わず参加していただろう。司令官の地位に、何ら魅力は感じられないが。


「隊長ぉ、もしかして、もう終わっちまいましたかぁ?」

 敬礼を解いて、赤星は辺りを見回した。最初に聞こえていた激しい銃声も何処へやら。聞こえて来るのは、時折『パァァン』という単発的な銃声と、何やら助けを乞う情けない声ばかりだ。


「まぁ、大体な。お前の分、取っておかなくて、悪かったなぁ」

 赤山は付近を見回した。両手に持っている拳銃は、確か出発したときには持っていない奴だ。きっと召し上げたのだろう。


「そうですよ隊長ぉ。弾倉余りまくりですよぉ」

 腰に差し込んだ弾倉をチラっと見せて、赤星は思わず苦笑いだ。

 赤山もそれを見るなり『済まなそう』にしている。


 どうやら赤星は最初の弾倉も、まだ使い切っていないらしい。

 それは悪いことをした。奴は一人殺ったくらいでは、とても満足なんてできないだろう。そう思えばこそ、決断は早い。

 両手に持っていた拳銃の内、右手の奴をクルンと回す。


「これ、そこで良いの貰ったから使ってみぃ? 弾、まだあるし」

 持ち手を上に揺らしたのを見て、赤星は直ぐに一礼した。

「ありがとうございます! 良い銃ですねぇ」

 嬉しそうに手に取ると早速狙いを定めた。


 あげた方の赤山は満足気に頷く。

 ピタッと狙いが定まって、手にしっくりと馴染んでいるようだ。なかなかに決まっている。銃口の向きは『副本部跡』だ。

 きっと装甲車の『車検証』でも、狙っているのだろう。


「バァーン! なんちゃって」「あはは。気を付けろよぉ」

 おふざけで撃った振りだ。赤山にもそれが『冗談』だと判る。

 何故なら人差し指を真っ直ぐにしていて、トリガーに引っ掛けていなかったからだ。落ち着いて良く見ている。


「それなぁ、随分『ソフトタッチ』にしてあってなぁ?」

 拳銃を人差し指で指してから、何度も折り曲げて見せる。

「へぇ。そうなんですかぁ」「俺の好みじゃないから、やるよ」

 赤星は素直に嬉しい。生粋の殺し屋と言われた赤山が、『拳銃のトリガー調整』くらい出来ないはずがない。単なる言い訳だ。


「早撃ちの隊長が言うんだから、どんなもんなんですか?」

 今度はトリガーにそっと指を添えて構える。狙いもバッチリだ。

 初めて使う銃なので、癖も何も判ったものではないが。


「気を付けろよぉ? あぁ、所で、電源車は確保出来たのか?」

 赤星は装甲車の『車検証』に狙いを定めていた。そこへ赤山から報告を求められたのだが、赤山にも狙いが判っているのだろう。

 一緒に眺めているので、赤星は構えたまま報告だ。


「あぁ、あれですね。拠点に運ぶように言って来ました」

『ドガーン!』「うわっ」『バーンッ!』「おぉっ?」

 左手に持っていたM16で、赤星が北を指したときだ。その方向から大きな火柱が上がって、爆音と共に付近が明るくなった。

 物陰からレッド・ゼロの仲間達が『何事か』と顔を出す。やはり生き残った奴らは、全員悪そうな顔ばかりだ。戦闘の度にか?

 装甲車の奥から出て来た仲間が、割れたフロントガラスから外を見上げている。『額を撃ち抜かれた敵兵』を足蹴にしながら。

 二人は最初から光源の方を見ていた。顔を見合わせて肩を竦める。


「もしかして、あれかぁ?」「ありゃぁ、そうかもしれませんねぇ」

 絶対『YES』に決まっている。それでも戦場に『不確定要素』は付き物だ。あの付近に『仲間が居ない』ことは誰にでも判る。

 敵が『味方の電源車』を発見して、『何故に攻撃したのか』を考える必要は、今は全く感じられない。

 手順一。『誰だあいつっ!』と気が付く。

 手順二。『止まれ』と注意する。

 手順三。『止まらないと撃つぞ』と警告する。

 手順四。『うわぁぁっ! 撃て撃てぇ』と警告、いや命令する。

 手順五。『ドガーン!』と爆発する。

 そんなことを考えているより、今は兎に角『逃げるが勝ち』である。どちらにしても、これで『戦闘終了』とはならないだろう。


 何しろこいつら『ロボット』は、バッテリーが尽きるまで単独でも動き続ける。コントロールを失った奴らが『どうなるのか』は、自分達が一番良く知っていることだ。何人か犠牲者も出ている。


 それでも、赤井が選択した作戦は『本部の急襲』だったのだ。

 これで文句はあるまい。敵陣のど真ん中でこれ以上の長居は不要。


『パァァンッ!』「お前ら、撤収だっ!」『パァァンッ!』

「行くぞっ赤星! そっち側に乗れっ!」「良いんすかぁっ!」

 二人は隊長機の左右に掴まって走り出し、本部急襲作戦を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ