アンダーグラウンド掃討作戦(二百六十六)
「野郎共、全員始末しろぉぉっ! 皆殺しだぁぁっ」
「おぉぉっ!」「突っ込めぇぇっ!」「オラオラオラオラァッ!」
敵本部の闇討ちは見事に成功だ。警備は案の定手薄だった。
陸軍も鹵獲された六機の自動警備一五型を、まさか『本部にぶつけて来る』とは思ってもいなかったのだろう。
当然だ。作戦は武器の発注段階から骨子が固まっている。
前提として『敵の不意打ち』や『潜伏先の補足殲滅』が。そして、『対人特化』『精密射撃』『損害軽微』と追加条件が付く。
更には『騒音注意』『日曜祝日』『三寒四温』『一日一善』等、誰もが理解に苦しむ条件まで突き付けられたのだ。
これでは六機鹵獲されたぐらいで『作戦の変更』なんて、誰も気にする訳がない。二の次は三だ。
仮に警戒していたとしても、対処出来ない理由がある。
それは『調和型無人飛行体』が、敵と味方の区別が付かないこと。味方でもバンバン射殺してしまうのだ。
試しに『コノ ヘルメット ハ ミカタ デス』とお勉強させてみた所、敵役が同じヘルメットを装着すると全く射殺しない。
仕方なくネットに繋いで『自由学習』させた所、今度は『味方DEATH(死)』と学習して、味方を射殺する始末だ。
結局『安全地帯』を設定して、そこでは『プカプカ』飛ぶだけにした。勿論今は、本部全体を『安全地帯』に設定している。
つまり、『調和型無人飛行体』は使えない。
「隊長! これ真ん中は『電源車』ですぜぇ! 破壊しますかぁ?」
ガラの悪そうな男が振り返った。隊長がパッと手を前に出す。
「待てっ! 使えそうなら『お持ち帰り』だっ!」
「へーい。ガッテン承知でぇい」「任せたぞっ!」
隊長は、隊長機の自動警備一五型に乗って行ってしまった。振り向いて、残された部下三人にはっぱを掛ける。
「おいお前らっ! 中を綺麗に『掃除』して来い!」
「行くぞっ! 続けっ」「はいっ」「はいっ」
隊長から直接指示を受けた男は、悪そうな顔をしているが『班長クラス』だろうか。逆光気味で見え辛いが、虚空を見つめている。
「流石隊長。熟知してらっしゃる。確かに一機も飛んでねぇや」
青空でも見えれば、のんびりタバコでもふかしたい気分だ。
しかし後ろでは、M16の連射音に混じって、多分人間と思われる叫び声が聞こえている。
「うるせぇなぁ。のんびりさせろよぉ」
苦笑いしてチラっと振り返るが、M16を構えて監視に戻る。
すると、隙間から走り出した人影、敵を見つけて素早く撃つ。
『タタン』「うわーっ!」「あぶねぇぞ。チョロチョロすんなよぉ」
親切に声を掛けてみたのだが返事はない。何だ。只の屍のようだ。
男は『ビビッて間違えちったっ。テヘペロッ』と舌を出す。
「赤星班長! 中の掃除終わりましたっ!」「おっ? 早いなぁ」
呼ばれて赤星は動き出す。そして、褒めらられると思っているのか、ニコニコ笑っている部下の前に立つと、頭を一発コツンした。
「敵陣で名前を叫ぶんじゃねぇよ。『身バレ』すんだろうがっ!」




