アンダーグラウンド掃討作戦(二百六十三)
予告されていたとは言え、爆発には驚くものだ。
廃墟に姿を隠し耳を塞いでいる男達は、驚いて目をパチクリしていた。予想より大きな音が響く。天上からパラパラと埃が落ちて。
「大丈夫なんだろうなぁ?」「爆破の勢いで、崩れたりして」
「洒落になんねぇよ」「ははは。でも、すげぇ音だったなぁ」
修学旅行の消灯時間後じゃないが、多少はワクワクしている。
これで何機破壊されたかは知らないが、ビビッて後退してくれたら良いのだが。
「もっとばら撒いてくれれば良いのになぁ」「だよなぁ」
「無いよりマシだろ」「あぁ。こんなの良く使用許可出したよぉ」
まだ遠くで『ドゴーン』と鳴る音が聞こえて来る。
『ブラック・ゼロが爆弾を仕掛けたから、蔵前橋通りには出るな』
そう言われて、仲間を助けにも行かれなかった。
罠を沢山仕掛けて来たし、バリケードも作った。それに、追い込まれてしまったら下水道へ逃げ込むこともできる。危険だけど。
きっと無事に逃げ果せたことだろう。そう信じるしかない。
もし、蔵前橋通りを突破して来たら、『次のCー4』が炸裂する。
今度は土嚢に仕掛けた物ではなく、マンホールの裏や、廃ビルの柱に仕込んだ物だ。
『上部は幾ら丈夫でも、狙われない底辺は大変脆いんだ』
確かそんなことを、誰だか知らない爺さんが言ってた。
若い奴を随分しごいていたが、あれが『親方』って奴なのだろう。
そうそう。あと『マンホールは絶対踏むなよ』とも言ってたっけ。
「おい。『プカプカ』が下がっていくぞ?」「えっ? マジ?」
腕を伸ばして鏡を見ていた男が小声で報告する。すると暗闇で、ピカッと目が光った。ガサゴソと一斉に動き出す。
所で、今の『プカプカ』は、正式名称『調和型無人飛行体』の勝手呼名らしいが、やはり『殺される役』にしてみれば公式名称では呼ばないらしい。
きっと嫌なのだろう。それは判る。
しかし、例え嫌な気分になろうが『敵の名前』は統一されていないと、報告するときに困ってしまう。軍隊では常識だ。
仲間内で勝手呼名を使っていては情報変換もままならないではないか。しかしまぁ、ここはレッド・ゼロであって、軍隊ではないか。
恐る恐るであるが、窓から顔を覗かせる。
さっきから『カサカサ』と乾いた音が付近に鳴り響いているが、それは『遮熱シート』だ。
ライトがあれば銀色に光って反射するのだろうが、ここはアンダーグラウンド。光のない世界である。ノープロブレムだ。
さっき『プカプカ』がプカプカ飛んで来たときは、こいつを被って大人しくすることで誤魔化した。意外と使える。メモしておこう。
「おい『デカブツ』も下がっていくぞぉ?」「やったぁ!」
若い奴は勝ったように喜んでいるが、まだ勝敗は着いていないだろう。男はポケットの『赤いスイッチ』を手で確認した。




