アンダーグラウンド掃討作戦(二百五十八)
「おい、野郎共! 時間だっ! 起きろぉ」(ガンガンガン!)
M16の被筒を持ち、銃床で『睡眠中の兵士』をぶっ叩く。
随分乱暴な起こし方だが、それが『正式な起こし方』なのだから仕方がない。文句があるなら、そう決めた黒松に言って欲しい。
待機電力で『命令待ち』となっていた自動警備一五型の目が光り、縮こまっていた体がヒュッと伸びる。
後はシステムが起動して、取り敢えず『移動モード』になれば行軍は可能。点滅している目が、『点灯』に変われば準備完了だ。
「隊長ぉ、こいつ『イチゴちゃん』なのに『野郎』だなんて言っちゃって良いんですか? 一応『女の子』ですよねぇ?」
何の心配をしているのか判らないが、苦笑いで指さしている。
すると叩き起こした男が振り返った。髭面のゴツイ男だ。
「あぁ? そんなの知らねぇよ。考えたこともねぇよ」
ぶっきら棒に答えたのは、レッド・ゼロの五番隊隊長・赤山だ。
暫くブラック・ゼロに派遣されて、自動警備一五型の使用方法についてレクチャーを受けていた。
今まで登場しなかったのは、それが『影の存在』でもあるからだ。
『もうたってまーす!』『もうたって『もうたってまーす!』
『もうたってまーす!』『もうたってまーす!』てまーす!』
音声はそのままに『下品な下ネタ』で、作者の言訳を良い感じに上書きしながら目が光った。すると赤山がM16を振り上げる。
「だってさっ。ほら、やっぱ男だろぉ? 合ってんじゃん!」
苦笑いしてM16を振っているが、銃口を向けられている自動警備一五型は、『キュインキュイン』言っている。
きっと『こいつ誰だ? 撃っちゃって良いのかな?』を確認しているに違いない。
「えぇー、陸軍でも『そんな仕様』になっているんですかぁ?」
「だから知らねぇよぉ。俺はブラック・ゼロの黒松様に、教わった通りにやっているだけぇ!」「そうなんですかぁ」
納得行かないが、それでもブラック・ゼロが言うなら仕方がない。
そもそも極秘作戦の暗号名である『本部九周』は、ブラック・ゼロが立案した『完璧な作戦』なのだ。
考えに考え抜き、起こり得る全ての事態を想定して入念に準備を進めた作戦である。
余りの出来の良さに、赤山は思わず黒田に聞いたものだ。
『この作戦を立案する上で、一・番・苦労したのは、何処ですか?』
『やっぱり『表紙』かなぁ。九州・吸収・九周で、結構迷ってなぁ』
『このじじぃ、変な所に拘るんで。いや遅くなってすいませんねぇ』
そんな作戦書を、この短期間で赤山は全て理解し、覚えて来た。
しっかりと頭に入ってはいるが、念のため腹に巻いている。
「くだらねぇこと言ってないで、お前らも行くぞっ! 時間だっ!」
赤山がM16の被筒を握り締め、振り上げたではないか。
そんな物で殴られたら、ひとたまりもない。ニヤニヤしていた隊員達の顔つきが変わり、一斉に担当の自動警備一五型へと走り出した。隊長は気が短い。直ぐに出発だ。
「良しお前ら行くぞっ! アディオスッ!」「アディオスッ!」




