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アンダーグラウンド掃討作戦(二百五十七)

「えぇっ? 俺なんですかぁ?」「あぁ、お前にピッタリだよ」

 語尾が窄んでいた。それを感じ取ったのか、それとも『梯子は嫌だ』と思ったのか判らないが、赤城は不満そうだ。

 確かに赤井も『だろうな』と思うし、こうも考える。


『こいつに俺達の未来を掛けて良いのだろうか?』


 間違いなく素直な気持ちだ。顔にも出ているだろう。

 そもそも赤城は軍人ではないし、格闘家でもない。サーカスの団員みたく、信じられない動きをするでもないだろう。多分。

 何が得意なのかと言ったら、多分何もない。注意力。少しは良いのかもしれないが、そんなの『得意分野』にはならないではないか。


「大丈夫。お前なら出来る」「うーん。じゃぁ、やってみます」

 簡単に引き受けた所を見ると、強い自己主張さえもないようだ。

 しかしここは、軍隊(調?)のレッド・ゼロ。やりますと言った以上は、きっちりとやって貰わなければならない。


「頼んだぞっ!」「俺達の運命は、お前の双肩に掛かっている!」

 肩を強く叩かれて、薄笑いをしながら頷く。

 あの顔は『双肩』を、『送検』とか『創建』に聞き間違えて理解した顔だ。全体的な文章の意味を正しく理解してはいないだろう。


「今のは『肩』な? 判るか? 『両肩』」

 赤井は両手で自分の両肩を叩き、赤城にアピールした。すると赤城はにっこり笑って頷く。良かった。判ってくれたらしい。


「はいはい。力は抜いて行きますよー」

 えっ? そっちに取った? どうしてそうなる?

 赤井は『やっぱり他の奴』と思って、一歩前へ出る。この作戦が失敗して『マザーコンピュータ』を止められなかったらどうなるか。


 ちょっと考えたくはない。それに、本拠地が落とされる前に決着を付けないといけない。

 最初に『捨て駒』と考えていた自分が悔やまれる。これは『プランB』であり、非常手段なのだ。優秀な人材を投入すべきだった。


 しかし赤城の『行動だけ』は早い。もう歩き出していた。

 流石に四番隊の隊長だけあって、集合時刻の五分前集合、からの、更に五分前集合にも五分早く来る男である。

 隊長の肩書は伊達じゃないということか。なら仕方ない。


「宜しく頼むなっ」「はい。行きます!」

 赤井が手を上げると、赤城も手を上げて明るく答えた。

 問題ない。いつもの赤城じゃないか。奴なら大丈夫。きっと明るい結果を持って戻って来るに違いない。


「ちょっと待て赤城。上から行くのか? 下から行くのか?」

 扉の所で赤井はもう一度赤城を呼び止めた。サポート出来る所があったら、してやらないと。そう思ってのことだ。


「勿論。ハーフボックスで行きますよ? 俺『都民』なので」

 ニッコリ笑って自分を指さす赤城。至極当然のことのようだ。

「はぁ?」「あっ、『元・都民』か。まぁ良いや」

 赤城が首を傾げても意に介さず。寧ろ『アンダーグラウンドの住人だった』と思い出したのだろう。言い直す始末だ。歩き出す。


「ちょっと待て! じゃぁNJSビルまではどうやって行くんだ?」

 理由が判らない赤井は、大きな声で呼び止める。すると扉を開けた所で、ドアノブを握ったまま赤城が振り返った。


「嫌だなぁ。ハーフボックスに決まってるじゃないですかぁ」

「決まってるってお前、何を言ってるんだぁ?」

「行先に『NJS四十一階』って指定するんすよぉ。判りますぅ?」

 薄笑いを浮かべて赤井を指さした。その目は『都民じゃねぇのかよ。しょうがねぇなぁ』である。カチンと来るではないか。


「知ってるよ! だから『そんな指定』が出来るのかよ!」

「さぁ。それは判りません。これから調べまーす」

「えぇ、大丈夫なのぉ? 急げよぉ? その後はどうするんだ?」

「その後?」「『関係者用』の入り口はグランドフロアだろ?」

「あぁ、そうでしたね」「そうでしたじゃねぇよ。どうすんだよ」

「大丈夫ですってぇ。何とかなりますって」「ならねぇって」

「だからぁ、そもそも『乗り換え』なんて、しないですからぁ」

 赤井は『はぁ?』と首を傾げるばかり。都民の言うことは判らん。


「説明不足でしたね。ハーフボックスの『通路』を行くんすよ」

「えっ、お前、それ大丈夫なのかぁ?」

 すると赤城は、『当たり前のこと過ぎる』と思ったのか、再び歩き出していた。ドアを開け放つと手を離し、パッと上げる。

 赤井の方に向かって『理由』を話すが、もう背中しか見えない。


「当たり前じゃないですかぁ。俺『都民』ですよぉ?」

「都民だと、何か関係あるのかぁ?」


「ハーフボックスの通路なんて、昔から子供の遊び場ですよぉ」

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