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アンダーグラウンド掃討作戦(二百五十六)

「百十九頁だけど?」「おぉっ! そこだっ!」「何が?」

 自分で頁番号を読み上げて、再び前に突き出した男だけが意味が判らなさそうに首を傾げている。

 多分この男は、作戦に連れて行かない方が良いだろう。


「四十二階か四十三階が『コンピュータールーム』ってことだよぉ」

 隣の男が仕方なさそうに説明してやった。傾げた首は元に戻る。

「なるほどっ。でも何で?」「お前なぁ」「赤城ぃしっかりしろっ」

 一同苦笑いだ。赤井も含めて。


 四番隊は隊長の赤城からして、ちょっと抜けている奴らが多い。

 やっぱり赤井も、司令官として『赤城の隊には任せられない』と思ったのだろう。次の指示を出そうと息を吸う。


「良く見ろよぉ。非常階段が切れてるだろぉ?」

 目の前に出した四十一の平面図と、机に投げ捨てられた四十四階の平面図を交互に指さして、非常階段の場所を指さしている。

 一瞬全員が『だから?』になったのだが、対面の男が紙を掘り出して、全面が見えるように置き直す。そして、二枚を見比べた。


「本当だ。階段がココから入れ替わっていて、繋がってないぞ?」

「まじか? じゃぁ、どうやって行くんだ?」「俺にも見せろよ」

 目を細めているのは『老眼だから』ではないだろう。ちょっと距離があるだけ。大事なことだから二度言うが、老眼ではない。

 とにかく全員でA4の紙二枚を見るには、机が大き過ぎるだけだ。


 赤城が四十一階の平面図を机上に並べて置く。そして、もう一度非常階段を指さした。判るように何度も交互に指さす。

 それだけ指させば、何処だか探していた者も場所を特定できただろう。隣の男が『もう良い』とばかりに赤城の腕を退けた。


「ご丁寧に『この階段は四十一階まで』って、書いてあるぞ?」

 小さな字で書いてあったのだろう。大分目を近付けて読み上げた。

 すると『じゃぁこっちは?』と、対面の男が平面図を覗き込む。


「んん? 『この先は避難梯子をご利用下さい』だとぉ? うそっ」

「何だそれ。あり得ないだろ」「四十四階だぞぉ?」

「おいおい。四十四階からグランドフロアまで梯子で降りるのぉ?」

 直ぐに突っ込みが入って一緒に覗き込むが、覗き込んだ全員が『同じ結論』に至ったらしい。

 覗き込むのを止めた後も、信じられなさそうに顔を見合わせている。無論、顔にも出ていた。『このビルで働きたくねぇ』と。


「これ、本物なんですか?」「当たり前だっ!」「まぁじすか」

「じゃぁ、一体、どっから入るんだ?」

「そりゃぁ、お前。ヘリで屋上に降りて、避難梯子で?」

「無理だろ。そんな作戦立案するんじゃ、お前行けよっ」

「えぇ。嫌だよぉ。俺、『高所恐怖症』って知ってんじゃん」

 口喧嘩はまだまだ続くようだが、いつまでも構ってはいられない。

 赤井は腕を組み、誰を送るべきかを考え始めていた。

 何だかこのビルは怪しい。赤井は口にしなかったが、エレベーターの通り道が、平面図毎にちぐはぐなのだ。しかしそれは、『ハーフボックス用』であれば理解できる。あれは縦横自由自在。行けないのは斜めだけだ。斜め上。斜め下。斜め右。一つじゃないけど。


「良しっ、赤城。君に決めたっ!」

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