アンダーグラウンド掃討作戦(二百五十五)
「それじゃぁコンピュータールームが、『何処だか判らない』のと、大して変わらないじゃないですかぁ。勘弁して下さいよぉ」
さっきまで『行く気満々』だった男が、一気に意気消沈してしまったようだ。両手を大きく広げて苦笑いしているのだが、気持ちは『手も足も出ない』だろう。
だからと言って『行かない選択肢』は、存在しないのも事実。
「ある程度は判っているんだ。良く見てくれ。この辺のフロアだ」
赤井は『まぁまぁ』と押さえると、今度は星印の場所を指さした。
確かにそこが『ゴール』なのは判る。だからそこは『何階』の『何号室』なのかと問いたい。問いている。問いていた。問え。
最後の『問え』は、全然関係なかった。気持ちだけ取り下げて、男達は赤井の指先に注目する。すると、その階だけ全く情報がない。
指さされた場所の、上上下下左右左右BAのフロアを探し出す。きっとその頁の前後左右に、示された階の平面図がある筈だ。
全員が手分けして資料を確認している。資料の殆どは、各フロア毎の平面図だった。非常階段は勿論、電気の配線とか給水管の取り回しも含まれていて、殴り込みを掛けるには役に立つ情報ばかりだ。
当然のことながら『何階』かの記載もある。急げ。
「有りました! 四十四階は百二十頁です!」「見せろ!」「あっ」
止せば良いのに、奪い取ったものだから紙が紙がバサバサっと落ちる。両方の男が慌てて、手持ちの資料を机に放り投げた。
「何だよ。落とすなよぉ」「そっちが奪うからでしょうがっ」
喧嘩が始まりそうだが、それは後にして欲しい。
しかしその辺は、二人も空気を読んだのだろう。黙って四十三階の平面図を探す。反対側の男が机の下を覗き込み、散らばってしまった紙に手を伸ばそうとするが、こちらからは届きそうにない。
「これだっ」「有りましたか」
机の方から声がして、一枚の紙を持った男がシュっと立ち上がった。結局最初に奪い取ろうとした男が、無事に手にしたようだ。
しかし笑顔も束の間。直ぐに渋い顔になってしまったではないか。
「四十四階は、『普通のオフィス』じゃねぇかよっ!」
折角探し当てて手にした平面図を、一目見て手放す。
しかも叩き付けるようにしたものだから、『立体図』の下に入り込んでしまったではないか。これでは他の者が確認出来ない。
「おいおい。何やってんだよぉ」「何だ。結局『何階』なんだ?」
会議室が荒れて来た。『今までしたことは何だった』と言いたい。
そこへ、口を尖らせた男がシュっと立ち上がる。見つけた男だ。
「だから四十四階は『上の階』ですってぇ」「早く言えよっ!」
「言う暇なんて、無かったじゃないですかぁ」「何だとぉ?」
待て待て。血の気が多いレッド・ゼロだとしても、ここで流血騒ぎは不味い。先ずは腰の拳銃に添えた手を離そう。なっ?
「俺が『四十一階の平面図』を持っているぞ?」
赤井が止める前に、別の男が手を上げる。今度は誰にも奪われずに、サッと前に差し出した。もちろん『普通のオフィス』である。
「それ、何頁目なんだ?」「んん? 見てなかった」
パッと引き戻して見た途端首を傾げる。まさか数字が読めない?




