アンダーグラウンド掃討作戦(二百五十二)
「仕方ない。『Cー4』の使用を許可する」「おぉっ」「やっとか」
赤井司令官の決断に、その場に居合わせた男達が唸った。
驚きと安堵の声に混じって垣間見えたのは、『やっと出番か』と笑顔になった者だ。頷き合った者の内、一人は伝令として飛び出す。
遂に『決断の時』が来た。赤井は司令官として身震いをする。
東京のド真ん中で『プラスチック爆弾』を使用するのだ。
それではまるで『テロリスト』ではないか。いや、自分達は違う。
しかし自問自答してみても、『敗北』の二文字がチラついていては、なりふり構わず決断せざるを得ない。これは戦争なのだ。
アンダーグラウンドが『最後の砦』である。一部の者にとっては。
多くは体制を追われた者、無実の罪を着せられた者、そして、異世界から飛んで来て路頭に迷う者も。
確かに一部は犯罪者や多重債務者もいるだろう。『反社会的勢力』による麻薬製造・販売や、一部奴隷売買なんてのも耳にした。
しかし『レッド・ゼロ』は、一般市民に対し『アンダーグラウンドでの安住』を提供する組織だ。一緒にされても困る。
武装だってそう。他の組織を壊滅させることはあっても、それは『自己防衛』であって、断じて『侵略』ではない。
地上で『人として暮らす者』には、判らないかもしれないが。
いや、残念ながら『同じ穴の狢』と見られてもおかしくはない。
何しろ自分達の『足元』で、ドンパチやっているのだから。
「まずはココを徹底的にやれっ」「承知しましたっ!」
赤井が具体的に指さしたのは、中学校跡地に設営された『敵本部』である。直ぐに伝令が飛び出して行った。
レッド・ゼロの機械化軍団を敵本部に叩き込む。
ブラック・ゼロが鹵獲した自動警備一五型は、全部で六機ある。こいつらを『前線に配置すべきだ』と主張する皆の意見を赤井だけが否定。前線に配置しなかった理由がこれだ。
敵の『正確な数』は判らないが、それでも六機で『何とかなるような数ではない』ことだけは判っていた。恐怖にも感じる。
だとしたらこの六機は、『一番有効な使い方』をしなければならない。ブラック・ゼロから仕様の報告を聞いてつくづく思った。
この兵器は『人間を殺戮するためのもの』であることを。
兵器自体が『正にそれ』なのかもしれないが。だとしても、今回の機械化軍団は可愛らしい名前に反して、余りにも酷過ぎる。
開発した奴らが一体どんな顔なのか拝んでみたい。きっと悪魔のような顔をしているに違いない。
それに『奴らの血は何色なのか』も、確認する必要があるだろう。
「第七中隊は『司令部護衛』の任を解く。そして、ココを急襲せよ」
机が揺れた。赤井が握り締めた拳で地図を叩いたのだ。声はいつもと違って低く、おちゃらけて冗談を言う風でもない。本気か?
「司令官、そこは?」「何がある?」「いや、民間の施設ですぞ?」
不安そうな目で一斉に赤井を見つめると、赤井がゆっくりと顔を上げた。その表情からは、強い決意しか感じられない。本気だ。




