表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
879/1538

アンダーグラウンド掃討作戦(二百三十二)

 上官に手を上げることは絶対に許されない。

 規律の厳しい軍隊では猶更だ。もしもそんなことをしたならば、楽しい『軍法会議』が待っている。注意されたし。


「酷いじゃないですかぁっ!」「わははっ! 良いじゃねぇかよぉ」

 しかし、小馬鹿にされたときは良いらしい。

 赤丸は赤坂の手を払い除けると、押さえられない怒りを赤坂の胸にぶつける。ポカポカと胸を殴り続けた。

 それでも赤坂は怒ることもなく、笑っているのだが。

 大して痛くはないのだろう。それに、強く殴っている訳でもない。

 だからだろうか。『気が済んだか』とばかりに、今度は赤丸の手を払い除けて後ろを指さした。


「ほれ、見てみぃ。あいつもやられるぞ」「えっ?」(ターン!)

 言った傍からタイミングが良い。再び銃声が響いた。

 まるで作者が『予め予定していた』かのような流れ。すると今度は、下を覗いていた男が仰け反るように崩れ落ちる。


『おわっ。あぁあぁっ!』

 音速と言えどもノータイムという訳には行かない。キャットウォークに崩れ落ちる姿を確認してから、やや遅れて叫び声が届く。

 見事命中だ。レッド・ゼロの二番隊はスナイパー集団である。しかし新人の赤丸は、不満そうな顔をして振り返った。


「下に落ちなかったじゃないですかぁ。あれ、まだ生きてますよ?」

「それで良いんだよ。足を撃ったんだろ?」「そうみたいですね」

 赤丸の苦情にも、赤坂は『作戦通り』なのか平然としている。

 しかしさっきまで、『ヘッドショットがベスト』であると思っていた赤丸にとって、足に当たったのは『実力不足』以外の何物でもない。不思議そうに首を傾げている。


「助けに来た奴をまた撃つからぁ。それで良いんだよ」

「えぇぇっ、それは酷い。中々の鬼畜ですねぇ」

 苦虫を噛み潰したような顔になって振り返る。赤丸は『常識人』なのだろうか。それとも『良い奴』なのか?

 いや、知らないだけで、赤坂とそう大差はない。


「この作戦で、『俺達の役割』とは?」

 ニッコリ笑った赤坂の顔を見て、赤丸は直ぐに思い出したのだろう。しかし渋い顔になって答えを捻り出す。


「『恐怖を植え付けること』です」「その通り。良く出来ました」

 赤坂の笑顔を見たくなくなったのか、赤丸は再び振り返った。

 遠目に見える『撃たれた男』は、狭いキャットウォークの上で足を押さえてのた打ち回っている。


「助けに来なかったら、あいつ死ぬんじゃないですか?」

「まぁ、死ぬだろうねぇ」「助けに来た奴が撃たれたら?」

「まぁ、それも死ぬだろうねぇ」「酷いなぁ」

 酷いのはお互い様である。五十歩百歩ならぬ、五十発百発だ。


 今回スナイプポイントに、『殺人ドローンが飛来する』と予想した。だから『あれ? 誰も居ない』と、調べに来た奴をスナイプすることにしただけだ。それなら何処から撃っているのか判るまい。

 じわじわと、一人減り、二人減りして行く『恐怖』を、じっくりと味わって貰おうではないか。遠慮は要らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ