アンダーグラウンド掃討作戦(二百二十九)
二人はそっと立ち上がった。赤丸は相変わらずのへっぴり腰だ。
敵が去った『R・S・P』へ急行する。きっと『何らかの情報』は持ち帰っているだろう。
この後敵の誰かが『こんばんわ』と、やって来ることも考えられる。そうしたら、『良い月夜ですね』と返してみようか。
いや、そんなことにはなるまいて。来るとしたら、銃を乱射しながらに違いない。
当たったら痛そうだし、唾だって掛けられちゃうかもしれない。
それに、本来『確認済』とマーキングをするスプレーで、落書きだってされちゃうかもしれないではないか。
恨みを晴らす方法に『手段を選ばない』のであればそれ位はする。
「そうなったら、嫌だろう?」「えぇ。しかし容赦ないですねぇ」
二人は苦笑いで、がっちり固定されたM95を外しに掛かる。
外したら、今度は別の場所に設置するのだ。『敵本部を狙うお仕事』は、そう簡単には終わらない。
もし『勘弁して下さいよぉ』と言われても、黙ってしっかりと撃つのが『スナイパーのお仕事』なのだから。戦争は人を狂わせる。
赤丸はともかく、赤坂だって人の親。
戦死した兵士の家族が『どう思うか』なんて、良く知っている。
「これ、どうやって撃っているんですかぁ?」「んんっ?」
受信機を手にした赤丸が、不思議そうに質問した。
しかし赤坂は余りにも当たり前過ぎて、『質問の意味』が判らないようだ。首を傾げている。
「アンダーグラウンドって、無線使えないんじゃないですか?」
「あぁ。それねっ」「ですです」
『何だぁ』と思ったのだろう。赤坂の表情がパッと変わった。赤丸が手にした受信機を取り上げると、ビリっとテープを剥がす。
見えて来たのは赤い『数字のカウンター』だ。今はゼロ。
「予め時間をセットしておいてなぁ? 時間が来たら撃つんだ」
簡単に説明して、再びテープを上から張り付けた。グッグッと、上から強く押さえて剥がれないようにしている。
「えぇぇっ? 結構適当なんですねぇ」
「まっ、そんなもんだ。仕掛けは簡単な方が良いに決まっている」
肩を揺すりながら赤坂は軽く答えた。そして作業を続行する。
きっと『そんな質問』に答える暇があったら、早く撤収したいのだろう。しかし赤丸からの質問は続く。
「じゃぁ、『あのスイッチ』は、何だったんですかぁ?」
確かに赤丸はスイッチを押した。実際には画面に表示されたスイッチを、コントローラーで選択して押した訳だが。
「あぁそれね。あのスイッチは『カウンターをゼロにする』んだよ」
全ての荷物をまとめた赤坂が立ち上がった。
重たいM95を軽々と持ち、『質問は終わりだ』な雰囲気を醸し出す。赤丸は口を尖がらせながら、仕方なく立ち上がった。
「じゃぁ、『都バスが吹っ飛んだ』のも、そうなんですか?」
「それ違っ、あぁっそうだよぉ。お・ん・な・じぃっ。行くぞっ!」




