アンダーグラウンド掃討作戦(二百二十二)
「所で、赤坂さぁん。うわっ! ねずみっ! でかっ!」
「なっ! 何だよぉ。ねずみ位で驚くなよぉ。びっくりしたなぁ」
右へ左へ似たような道。退屈で仕方ない。だから赤丸は、さっきから『ここは何処』であり、もう直ぐ『私は誰』になるだろう。
ならないか。話の腰を折るなと? 申し訳ない。
「ゴールなら、まだまだだぞぉ?」
「まぁじぃすぅかぁ?」「まじまじぃ。おう、ココ気を付けろ」
「いや、聞きたいのはそれじゃなくてですねぇ、アブねっ」
こんな狭くて暗い場所からは、早く抜け出したい。二人は臭いには慣れて、もう鼻をつまんではいなかった。
所々で体を支えるために『両手を使わざるを得ない』状況に追い込まれたというのもあるのだが。
「だから、『気を付けろ』って言っただろうがぁ」
「上手く避けたじゃないですかぁ」
この通路、アトラクションにしては安全性に問題がある。
古いガス管が破裂して、溜まっているガスが漏れ出ている所や、『安全化』していない雨水などが溜まっている箇所もある。
それをすり抜けるのも一苦労だ。
この世界、『雨に濡れて人が溶けてしまう』のであるなら、『水分補給』は一体どうしているのか。このままだと、インスタントの味噌汁も、カップラーメンでさえも食べられなくなってしまう。
しかしそれでも、人は水と共にあるもの。
都合の良いことに、雨は太陽の光に照らされると『安全化』することが、『長年の経験』によって確認されている。
理由は説明されていない。て言うか『禁忌』として、研究すらもされていないのが実情だ。
「所で、何を聞きたかったんだぁ?」「あぁ、それですけどねぇ」
赤坂が思い出したように、この世界の説明を打ち切った。赤丸も少々遠慮していたようだが、赤坂が逆に聞いて来たのだから聞こう。
「本部に撃ち込んだ強力なライフル、厩橋で使えば良かったのに」
「あぁ、そのことか」「あれだったら、ロボ撃ち抜けるんじゃ?」
少し広い所に出て、取り敢えず二人は伸びをした。
どうやら先はまだ長いようだ。退屈な地下通路を歩くだけでは、集中力も途切れがちになる。
それに作戦についても、『全体の方針』を知っておきたかった。
「今回、どう見ても向うの方が、数、多いだろう?」
「うじゃうじゃ来ましたよねぇ。俺、あんなの初めて見ましたよ」
赤坂は戦闘経験者だが、赤丸に同意すると苦笑いで頷いた。
「うちの主力兵器である『M16』でさぁ、撃ち抜けないんだよ」
「まじすか。でも、『この辺』を狙えば行けるんじゃないすかぁ?」
赤丸は右手で『拳銃の形』を作り、自分のこめかみを指した。
赤坂にはそれが、どう見ても『拳銃自殺をする』ようにしか見えないのだが、きっと『頭を狙えば』だと汲み取ることにする。
「ダメダメ。あいつら頭なんか無くても、動き続けるから」
「へぇぇ。気持ち悪ぃ。『頭なんか飾りだっ!』なんすねっ!」
「いや、奴らそうは言ってないと思うけどさぁ」「違うんすかぁ」
「知ぃらねぇよぉ。だから、『人間の方』を狙うことにしたのっ」




