アンダーグラウンド掃討作戦(二百十五)
「グレネードランチャーは、手榴弾をポンポン撃ち出す奴だな」
彼らは厩橋で行われた『最初の戦闘』を見ていないのだろうか。
あれだよあれ。まぁ、奴らが手にしているロケットランチャーの方が、一発の威力としては十分強力なのだが。
「良いなぁ。一機くださいよぉ」
「駄目だ。一機しかないからな。弾も限られるし」「えぇぇっ」
秒で否定されても、きよピコは引き下がらない。
いや、断固として引き下がれないのだ。
何せ自機はまだ六機。山岸少尉とは三倍以上の開きがある。隊列を組んで行進しても、見栄えに随分と差が出来てしまうではないか。
理由が『見栄え』とは、聞いて呆れていることだろう。
しかしそれでは、きよピコの気持ちは永久には判らない。むしろ『だからこそ』でもあるのだ。
「仕方ないなぁ。じゃぁ『機銃の奴』なら、三機そっちに回してやるよ。今回だけ『特別』だからなぁ?」「良いんですかぁ!」
やっぱり山岸少尉は、きよピコのことを理解していたようだ。
部下が『一番喜ぶこと』を把握しておくのも、上司の務めである。昔、もっと偉い人が言っていたような、いないような。
「ズルいぞきよピコぉ。俺より多くなるじゃねぇかよぉ」
実は山岸少尉の『三機』と聞いて、たなっちは得意の算数を駆使すると『きよピコ隊の総数』を瞬時にはじき出していた。
勿論『たなっち隊の総数』とを比較し、『どちらが多いか』についても掌握済である。許せなかった。悔しい。だから叫んだ。
「えへへ。ラッキー。少尉殿は、俺に期待してくれているんだよ」
言われたきよピコは、そもそも『たなっち隊の総数』を覚えてはいなかった。んが、特段『海馬に障害』を持っていた訳ではない。
山岸少佐の『ニ十機』の数、常識外となる『二桁の数』に気圧されて、『たなっち隊』の存在自体が吹き飛んでしまっただけだ。
むしろ『たなっちが怒っている』のを知ったからこそ、『あぁ、そうなんだぁ。俺の方が多いんだぁ』と感想を抱いただけ。
そこに『深い意味』などはないのだ。
「ざけんなよ?」「おいおい、喧嘩は余所でやってくれよ?」
コンソールを打鍵するのを止めた田中軍曹が、真顔で後部座席を覗き込んだ。それを見た二人が争いを止める。
どうやら二人は、田中軍曹にも『一定の敬意』を抱いているようだ。それもそうだろう。田中軍曹は『少尉の一つ下の階級』である。
山岸少尉が晴れて『将軍』だか『大将』になった暁には、田中軍曹も山岸少尉の跡を継ぎ、『少尉』となることが明白だからだ。
実際は違うけど。人間『思い込み』も、ときには意味がある。
実は三人がバタバタしている間に、田中軍曹は後ろから雪崩れ込んで来る奴をとっ捕まえて、自分の隊に組み込んでいた。
その数、実に三十機。釣り放題。正に『入れ食い』である。
しかしそれは『自分だけ』の秘密。他の三人には秘匿する。
「ほらぁ。二人共同じになるように、俺のを分けてやるからぁ」
「良いんですか! あざぁぁっすぅ!」「流石軍曹。神ですかぁ?」
コンソールを打鍵して、二人の隊が十機づつとなるように調整だ。




