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アンダーグラウンド掃討作戦(百九十六)

 軽トラックが角を曲がると、一人の男が現れた。

 手を前に出して『止まれ』の合図。ここで素直に止まらなければ、手に持っているM16でハチの巣にされてしまうだろう。

 軽トラックの運転手は『銃口を向けられる』ことに、慣れていないのだろう。警備の男から大分離れた所で急停止した。


「おおっとぉ!」「いてっ! なんだっ!」

 シートベルトをしていなかった助手席の赤川は前へとつんのめる。

 元々拾って来た軽トラックだ。エンジンだけを直して走るようにしただけなものだがら、シートベルトなんてなかった。


 しかし赤川には状況が見えていただけマシである。

 荷台の男は後ろを向いていて、急停止は『予期せぬ事態』だったらしい。後頭部を後ろにある分厚い鉄板にぶつけてしまった。

 感想を聞いても答えは無さそう。両手で頭を押さえている所だ。


「何だ。検問かよぉ。もぉ、脅かすなよぉ」

 運転席との仕切りである鉄板を『ドン』と叩いたので、それは間違いなく運転手への苦情であろう。運転手からの謝罪はないが。

 見上げれば、塞いだ窓の隙間から銃口が覗いている。

 それでいて、爆音も銃弾の風切り音もしない。だから軽トラックの荷台から、ヒョッコリと振り返った。

 するとそこには、見覚えのある仲間がいて笑顔で歩いて来るではないか。やっぱり拠点に帰って来たのだ。


「お帰り。早かったなぁ。全員無事か」

 警備の男がM16を『見えない空』へと向ける。引き金から右手を離して小さく手を挙げた。肘を曲げて顔のちょっと下で挨拶。

 敬礼なんてしない。ここは『正規軍』ではないからだ。


「あぁ。上手く行ったぜ」「良かったなぁ」

 手動の窓を開けて、赤川が警備の男と話し始めた。

 赤川は組織上『三番隊隊長』と言うことになっているが、『一般兵』の警備の男とも『友達同士のような会話』となっている。

 どうやらレッド・ゼロにおける『隊長』という肩書は、『連絡係』という側面が大きいようだ。逆に言うと『敬意』は、『実績だけが物語る』とでも言うのだろうか。


 慣れない新人から見たら『緩い組織だから』で、済む話かもしれない。しかし上層部は別の悩みを抱えている。

 それはあらゆる面で、『人の入れ替わりが激しい』ということに尽きる。そう。つまり『教育している暇』などないのだ。


「赤岩から連絡はあったか?」「どの赤岩だい?」

 おかしなことを聞く。同じ『赤岩』でも、二人が思い浮かべた『赤岩の顔』は何種類もあって、どうやら違うらしい。


「嫌だなぁ。この間紹介した『七代目の赤岩』だよぉ」

「あぁ、『陸軍の後輩』って言ってた奴? 思い出したっ!」

 警備の男はパチンと太ももを叩くと、パッと笑顔になった。

「そうだよぉ。覚えておいてくれよぉ」

 赤川も警備の男を指さして笑う。運転手は愛想笑いだ。


「すまんすまん。六代目の印象が強すぎてさぁ。上で聞いてくれ」

「了解。確かに先代は『トロい奴』だったもんなぁ。ありがと!」

『行け』の合図を見た運転手は、軽トラックを直ぐに動かした。

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