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アンダーグラウンド掃討作戦(百九十三)

 拠点までもう少しの所で、突然軽トラックが飛び出して来た。

「うぉっ。アブねぇ! (ドンッ)」

 赤川は思わず電動キックボードから飛び降りる。バランスを取りつつ、助走をしながら電柱にぶつかって減速。

 ちょっと痛かったが、軽トラックに轢かれるよりはマシだ。


 軽トラックの横っ腹に、電動キックボードがぶつかった音を聞いたからだろう。交差点を過ぎた所で軽トラックが止まった。

 驚いて振り返った運転手は、どうやら『見覚えのある奴』なのだが、ここは一発殴っておくべきだろうか。


「おぉ、赤川! お前、無事だったかぁ!」

「今、お前に殺されそうになったけどなっ!」

 運転手が笑いながら『乗れよ』と手招きをしている。

 交通事故の加害者と被害者がこんなにも仲良くなれるのは、『アンダーグラウンドならでは』と言えるだろう? いや、んな訳ない。


「この席、大丈夫なんだろうなぁ?」

 助手席側のドアを開けつつも、背後の鉄板をカンカンと叩く。

 安いかもしれないが『命』が掛かっているのだ。そうおいそれと信用する訳にも行かない。顔はニヤけているのだが。


「大丈夫だよ。実績があるからさっ。早く乗れよ」

「あぁ。そのようだな」

 仕込んだ鉄板に『見覚えのない傷』がある。それも複数個。

 どうやら実験の通りの結果が得られたようだ。

 敵側がもっと強力な火器を装備していれば、鉄板でも貫いたかもしれないが、事前の調査通り『対人兵器』のようだ。


 もしかして『舐めている』のか、それとも『人として認められている』のだろうか。疑問は尽きないが、今はそれを口にはしない。

 どちらでも良い。敵が『殺しに来ている』のは明白なのだ。


 果たしてそこに『ルール』があるのかは別として。

 しかしその『ルール』とやらも『敵方が勝手に決めたもの』であって、こちらは一度も合意したことはないのは確か。

 むしろ相手が、勝手に『足枷』を装備しているに過ぎない。

 変な趣味である。とても真似できない。


 それとも、その『ルール』とやらで『我は人である』を自覚しているのだろうか。人殺しにまでルールを設け、それを守るとは。

 だとしたら『人である』こととは、何とも罪深きことだ。


 軽トラックは、赤川を乗せて走り出していた。

 このアンダーグラウンドに『平和』程、似合わない言葉はない。

 力による支配、生きる為には何でも有り。それでも、ここでなければ暮らして行けない『訳アリな奴ら』が沢山いるのだ。


 どうか、邪魔をしないで欲しい。


 それが素直な願いだ。むしろそれしかない。

 しかし陸軍の奴らは、それを許してはくれない。どうにかしてこのアンダーグラウンドから、我々を一掃したいと思っている。

 あぁ。これから先、どうしたものだろうか。


 赤川が窓枠を使って頬杖をついたとき、『ドンッ』と音がした。

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