アンダーグラウンド掃討作戦(百九十)
隊長が見た『何か』は調和型無人飛行体だった。
良く見れば『六機編隊』を組んでいるが、見えた瞬間に『死』が待っているのでそれはお断りだ。
それに今は協調してはおらず、十分経ったら放たれた場所へ戻るように設定された『狩りモード』になっている。
こいつは『マザーコンピュータの支援』を受けることも出来るが、内臓されたコンピュータで『標的』について自己判定も可能だ。
一番確実なのは『熱探知』である。人間は生きている間は暖かい。
だから生きている証拠である『赤外線』を検知して、そこへ弾丸を打ち込む。狙いは頭部だ。ピンポイントで撃ち込んで来る。
蔵前橋通りで散開する様を、当然のように捉えていた。
六機は互いに連絡を取り合うと分担を決定する。何だか『小さいの』が四つと、『大きいの』が一つ。合わせて五つだ。
テストのときは判り易く『ピポピポ』と音がしていた。
打ち合わせの実施を確認するためだ。確認した結果を液晶に表示したりもしていたが、実戦では誰も見てはいない。一切不要だ。
結果として二機が軽トラックを追い、残りの四機が一機づつに別れ、電動キックボードを追い掛け始めた。
三つ目通りの交差点を『ヒュンヒュン』と音を立てながら曲がる。
軽トラックの運転手は、バックミラーを見て焦る。とは、ならないのがアンダーグラウンドだ。真っ暗で見えやしない。
いや、暗視スコープを付けているのだから、見えるのかもしれないが出来れば見たくない。直視した所で『鏡越しだから平気だろう』という意見は、どちらかと言うと無責任な結果に陥りそうだ。
『カーンッ』「うわっ! 撃って来やがったっ!」
『カーンッ』「何だよ二機かぁ?」『カーンッ』「ひぃぃっ」
実は運転席裏を『鉄板』で囲っている。だから五・五六ミリ弾なら弾く。後ろからなら安全だ。と思う。思いたい。思え。
それでも前に回られたら、ただのガラスである。
事前情報だと、どう考えても『追う側』の方が速い。もしも前から撃たれたなら、確実に額を撃ち抜かれてしまうだろう。
それでも執拗に『後ろからの攻撃』が続いているのは訳がある。
赤外線センサーとそれに関する設計情報について、アルバトロスから情報を得ていた。仕組みが判れば『何だ』である。
運転席を守る鉄板に『ニクロム線』を『人型』に這わせている。人間の体温と同じ三十六度になるように調整してだ。
一応空席の『助手席側』に設置してあるので、運転手は驚いているのだが『結果として無事』という訳だ。
格好は悪いが『弾切れ』か『時間切れ』のどちらかを最初から狙う作成である。
それに、軽トラックの運転手は『元農家』というだけで、特にこれといった『軍務に就いた経験』はない。
だからひたすらにアクセルを踏んで『引き分け』を狙うだけだ。
一方の『電動キックボード』で逃げる四人は、軍経験者だった。
それでも『こんな逃げ方』は初めてだ。暗視スコープを頼りに、真暗な廃墟街を全力でかっ飛ばす。後ろを振り返らずにだ。




