アンダーグラウンド掃討作戦(百八十六)
そう言っておきながら『どこだっけ』と探している。
それもそうだろう。何せ地図は随分昔の奴だ。人工地盤が出来た後に、そう都合よく『アンダーグラウンドの地図』がある訳がない。
元々何があったかなんて、今更判らない。
記憶にある風景と、人工地盤が出来る前の地図を合わせて『多分この辺』と推察して行くのだ。
手書きなのだろうが、等間隔で幾つも並ぶ『■』は、人工地盤を支える『柱』だろう。地面から大きなビルとなっている箇所は、区画全体が黒く塗られている。
そんな地図から黒く塗られていない、広い土地を探し当てた。
「この、『中学校跡』、ですね」「間違いないか?」
赤井に言われて、今度は柱の数を『一、ニ、三』と数え始めた。
アンダーグラウンドの『基準点』から、きっと柱の数を数えながら進んでいたのだろう。基本的に真暗で、これと言った目印もない。
「間違いありません」「良し判った。ここかぁ」
柱を目印として使った方が、位置関係が判り易いのは確かだ。
その中でも『学校跡地』は、割と大きな『更地』となっていることが多いので目立つ場所でもある。
元々広いグラウンドがあっただろうし、人工地盤の上に引っ越した場合は、基礎を残して建物は奇麗に除去されている。
足元が『変なこと』に使われていたら困る、ということもあるだろうが、実際は移転してしまっていてそうでもない。
区の施設は学校も含め『区立ビル』に統合されていたりするのだ。
何しろ『ハーフボックス』で通うのなら、学校なんて区の何処にあっても通学に困ることもない。
何だったら、全ての小学校を一つの高層ビルに集約しても良い位だ。え? 体育の授業はどうするんだって?
非常階段の昇り降りとか、ビルの壁上りでお茶を濁してくれ。
「スナイプ出来る場所はありそうか?」「はい。幾つもあります」
地図の上に、今度は写真がばら撒かれた。一斉に顔をしかめる。
パッと見『ほとんど黒一色』の写真なのだが、それも致し方なしだ。何しろ真っ暗な中、僅かな明かりで撮影したものだから。
学校の敷地に『機械化軍団の本部』が設けられると言うことは、そこにおわすお方は『人間様』である。
『機械化軍団が無敵なら、人間の方を狙えば良いじゃない』
マリー。と、偉い人が言ったか言わないかは定かでないが、少なくとも赤井はそう考えた。だから黒田に『スナイパーライフル』と『暗視スコープ』を大量に発注したのだ。さっき届いたのを見た。
「ここから、A地点、B地点、C地点」「これ、E地点じゃね?」
「あっ、そうだね。似てるなぁ。えーっと、これがC地点です」
構図も『窓辺』ばかりで似たり寄ったり。だから写真を『順番』にしておいたのに、格好付けて地図の上にばら撒くからだ。
「暗くて判らんなぁ」「まぁ、行ってみれば判るよ」「だな」
おいおい。苦労して写真に撮って来た意味とは。時間を返せ。
印刷までして整えた隊員が『ふくれっ面』になっているが、仕事と言うのは往々にして『そんなもの』だ。諦めるしかない。




