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アンダーグラウンド掃討作戦(百七十七)

 身バレしてしまっては、ボイスチェンジしても意味がない。

 黒田は口をへの字にすると、鉄格子の鍵を開けた。いつの間にか鍵を所持していたらしい。

 どこからともなく『色々なものを調達して来る』のだが、どうやら今日は『孫』ということになってしまったようだ。

 いや、今回は自分ではないのだが。


「どこから『あの切手』を入手したんだい?」「何のこと?」

 扉を開けてやると琴美も素直に出て来たのだが、黒田の言っていることの意味が判らないようだ。


 それもそうだ。琴美にしてみれば『あの切手』は、『爺さんの若い頃』の似顔絵だったかもしれないが、若い頃の爺さんの姿など知る由もない。ましてや、人から貰った『タダの切手』である。

 既に『記憶の欠片』すらもない。首を捻るばかりだ。


「そうかぁ」「あの切手、もしかしておじいちゃんだったの?」

 むしろ孫から逆に聞かれて、黒田は照れた。

 今でこそ『そうでもない』と思う。しかし黒田は写真に撮られることを、昔から極端に嫌っていた。仕事上、やむを得ないのだが。


「そうそう。そうだよそれ。思い出したか?」

「うん。だけど帽子被ってるしぃ、『名前』しか思い出せない」

 苦笑いで答える。その笑顔で黒田は、利用についてどうやら『特に意味などない』と理解したようだ。


「あれっ、独房から出しちゃったんですか?」「うっそ!」

 オレンジを拾ってからやって来た黒山と黒川が、角を曲がって現れた。見えたのは、通路に打ち捨てられた紙袋と狂暴な女だ。

 二人にしてみれば冗談じゃない。逃がすなら、最初から掴まえてくる必要などなかったのに。どういうこっちゃ。


「何か、『黒田さんの孫』らしいすよ?」

 ポケットに突っ込んでいた手を出して琴美を指さしたのは黒井だ。

 それを聞いた黒山と黒川は相当驚いたらしく、二人同時に首を左右に振り始めた。黒田と狂暴な女を、交互に見比べているらしい。


「えっ、マジで? 本当ですか?」「全然似てませんけど?」

 だいぶ失礼な発言をした黒川の方が、すれ違いざまに黒田のゲンコツを食らう。苦笑いで後に続く。

 それを狂暴な女が『ざまぁ』と笑いながら眺めている。


「孫の『琴坂琴美』です」「どうも」「オレンジ要る?」「いいえ」

 歩きながら琴美が挨拶をしたのだが、実は『そんな名前だった』というのは知っていた。そもそも『差出人』として書いてあったし。

 むしろ『名前しか判らない相手』を、ちゃんと拉致して来れたことを褒めて欲しいくらいだ。褒められたことではないが。


「所で、相手の『弓原朱実』って、誰だい?」

 歩きながら黒田が琴美に問う。判らなかったのはそれだ。

 どうして琴美が『重要な情報』を手にしているのかも、それを一体誰に流そうとしていたのかも。

 すると琴美は小首を傾げ、キョトンとした顔になる。


「お父さんと同じ、NJSの人よ。最初は会社見学で会ったの」

「へぇ。そうなんだ。もしかして『ハッカー』なのか?」「そう」

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