表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
804/1537

アンダーグラウンド掃討作戦(百五十七)

 闇夜に浮かび上がるド派手な『海上花火大会』を、屈託のない笑顔で眺めている奴らがいた。イー407から発艦した晴嵐に搭乗する、鈴木少佐と黒田の二人だ。


「良い景色だなぁ。おっ、今度はスターマインだ」

「奇麗ですねぇ。花火なんて、暫く振りに見ました」

 席は前後だが、呑気に話す互いの声はバッチリと聞こえている。


「いやぁそれにしても、ここは『特等席』ですねぇ」

「そうだな。しかし、この角度からの眺めも良いなぁ」

 ある程度の高度を保ち飛行を続ける晴嵐なのだが、それでも二人は花火を『見上げて』楽しんでいる。


「ちょっと角度を変えてみますかっ!」

「おぉっ! イイネェッ!」「ヒャッホーッ」

 その瞬間、真横になっていた晴嵐がクルンと一回転。今度は逆さまになっての『花火見物』としゃれこんで観る。


「素晴らしいっ! 花火が逆さまに打ち上がっておるっ!」

「大佐、お言葉ですが『打ち下ろされている』では?」

 鈴木少佐は黒田のことを『大佐』と呼称している。まさか『ぶち込みの黒井』じゃあるまいし、『じじぃ』呼ばわりは無理だ。


「確かに。しかしこの角度は、地上でも逆立ちすれば観れるなぁ」

「そうですねぇ」「今度、地上でもやってみるか」「ハハハッ」

 二人共逆さのまま呑気に笑い始めた。


『そうですねぇじゃねーし。じじぃもじじぃだっ!』

 無線に割り込んで来た怒号。その声は噂の『ぶち込みの黒井』だ。

『もしもーし。鬼神さーん。まだですかぁ? 準備OKですよー?』

 じれったくなったのだろう。いやそれとも何か? 黒井も『花火大会』を見物したいのだろうか。うん。その気持ちは判る。


「あぁ、今からそっちにアプローチ掛けるぅ。オーバー」

『急いでいるんじゃなかったのかよっ! たくぅ。あ、オーバー!』

 鈴木少佐は振り返ると、後ろの黒田へ済まなそうに『苦笑い』を見せた。すると黒田も苦笑いで頷く。花火見物は終了だ。


 結局の所、再び急旋回してイー407へと近付く。艦尾からだ。

 グングン高度を下げれば、見る間にイー407が見えて来た。眼前に広がる黒一面の海。そこへ一筋の白波が見えている。


 確かに『急いでいる』と見えて、鈴木少佐は『急降下爆撃』よろしく高度を下げている。

 艦橋で見上げていた監視員が『双眼鏡』を外して裸眼になると、思わずしゃがみ込むほどの迫力だ。


「所で、尾灯は点けなくて良いのかぁ?」

「そうでしたぁ。尾灯点灯しまぁす」「ようそろぉ」

 乗員の二人は、そんな『急降下』さえも楽しんでいるようだ。

 鈴木少佐が尾灯を点灯したついでに、操縦桿をグイッと引っ張ると、晴嵐の角度が変わる。そのままイー407の上空を通過。


『バーン!』カタパルトから、後続機を射出する爆音が響く。

「ここで尾灯消したら、奴は怒るかなぁ」「やってみますぅ?」

 鈴木少佐が振り返ると、前に向き直った黒田が『ニッ』と笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ