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アンダーグラウンド掃討作戦(百五十一)

 楓が水着のまま部屋から出ようとするので、五十嵐が慌てる。

「何処行くんですかっ! 船長に怒られますよ?」「あっ!」

 きっと操舵室へ向かおうと、していたに違いない。今頃、何か情報が入っているだろうし、安全かどうかは別として、何となく『高い所』の方が、『沈むのが一番遅い』かもしれない。知らんけど。


「なっ、何着て行こうかしら?」

 クローゼットを開けて服を選び始めているが、どれにしようか迷い続けている。そんなの、『動きやすい服』に決まっている。

「楓お嬢様、『ウェットスーツ』とか、無いんですか?」

「そう言えば、あるわよ?」

 冗談で言ったのに、パッと嬉しそうに振り返った。クローゼットから離れると旅行鞄を引き寄せる。それをベッドの上に放り投げた。


「硫黄島に上陸したら、スキューバーしようかと思って」

 パカンと蓋を開けると、中は『マリンスポーツ用品』で一杯である。五十嵐は手伝う訳にも行かず、顔をしかめるばかりだ。


「あのぉ、楓お嬢様? これは一体?」「なぁにぃ?」

「ご学友を『危険な目に合わせた』ので『反省』しに行くのでは?」

 すると、五十嵐が見たことのある奴とは違う、新調したばかりのウェットスーツを体に合わせ、微笑んでいる。

「もちろんよっ!」「えぇぇっ! 怒られますよぉ?」

「五十嵐が黙っていれば、だぁい丈夫よっ。大丈夫っ!」

 じっと目を見ての念押し。見られた五十嵐は、引き続き渋い顔。


 まぁ、ウェットスーツを着ていれば? 救助が来るまで? 死なないでいられるかも? サメとか来なければ?

 とにかく最終的には『無事』なら良いのだ。結果オーライだ。


「ちょっと五十嵐、ぼさっとしてないで、手伝ってよっ!」

「はっ、はいっ!」

 くねくねと体をくねらせながら、ウェットスーツを着込む楓に近付いて、ピッタリサイズのゴムの服へと楓の体を押し込む。


「もしかして、『酸素ボンベ』も、あったりします?」

 ぶちまけられた旅行鞄から飛び出したのは、『手袋』だけならまだしも、『ゴーグル』やら『シュノーケル』やら。

 飛び出さなかった方には、『足ひれ』まであるではないか。


「あら。良く判ったわねぇ。ありがとっ」

 背中のチャックを締めて貰い、笑顔で振り返った。

 その足でトコトコ何処へ行くのかと思ったら、靴箱の横から『酸素ボンベ』も現れたではないか。五十嵐は溜息だ。


「楓お嬢様、それは一旦、置いて行きましょ?」「大丈夫なのぉ?」

 両手を前に出して振って見せても、楓の決意は揺るがない。

「操舵室へ行くんですよね?」「そうよ。船長に状況聞かないと」

 上を指さして見せたが、楓も当然のように、上を指さした。

「そこに『ダイビングの恰好』をして?」「そのつもりだけど?」

 シュノーケルを装着する素振りまで見せたのに、楓の反応は変わらない。渋い顔と笑顔が向き合って、そのまま微妙な空気が流れる。


「ダメですっ! そのまま行きますよっ」

「ちょっ、五十嵐っ! 酸素ボンベッ! シュノーケルッ!」

「直ぐ行きますっ! 船長に殺されますよ!」「スイートポテト!」

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