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アンダーグラウンド掃討作戦(百四十六)

 操舵室も混乱していたが、機関室はもっと混乱していた。

 いや、正確に言えば、機関室についてはもう混乱してはいない。しかしそれは、決して良い意味ではなく悪い意味で。既に無人だ。


 黒田の指示でイー407から発射された魚雷は、マグロ漁船のスクリュー音を捉えて静かに推進していた。やがて浣腸よろしく艦尾に突き刺さると、『こんにちわ☆ミ』と顔を出したのだ。


 そんな深夜の時間帯に突然のご訪問とは。ルームサービス?

 あぁ、新婚旅行での初夜にて、『そろそろ三回戦』であろう時間帯である。そんなの、絶対に勘弁して欲しいではないか。


 温情で信管は抜かれていたため、爆発には至らなかった。

 しかし、顔を出した場所が悪かったのだ。何でもそう。ちゃんと決められた場所に突っ込まないと、後で遺恨を残す。


 つまり驚いたのは、スクリューの方である。

 真っ直ぐに伸びているはずの『軸』が微妙に曲がり、それが『あれあれ? おかしいなぁ』と思いながらも回転を続けている。

 段々と『ちょっと? あれ? 何、どうしたの?』と声を荒げて見るが、どうにも止まらない。


 遂に軸が折れ、ギアの歯も欠けて吹き飛び、あっちらこっちらのの配管を傷つけながら、機関が大爆発を起こしてしまったのだ。

 僅か五秒間の出来事。もちろん復旧は困難、いや出来ない。

 ついでに言えば、魚雷と共に海水までもが、溢れんばかりに侵入して来てしまっている。『これが浸水だ』と、言わんばかりに。


 因みに、船にポッカリと穴が開いてしまったら、修理をするため、速やかに一旦停船するのが基本である。

 船が進み続けていれば、その勢いでがっつりと水が入って来てしまうのだ。水量は無尽蔵。とても人力で抑えられるものではない。


 幸いなことかは不明だが、大きく吹き飛んだ右側のスクリュー軸が、左側の軸にも干渉し、浸水も相まって止まってしまっていた。

 左右のスクリューを回す機関室は、それぞれが別の部屋になっている。それでもスクリューは、仲良く隣同士。壊れた部品が飛び交ってしまっては、おちおち回転もしていられない。完全に停止した。


 因みに、全ての電源が落ちたのは魚雷とは関係ない。

 だからもし裁判になったとしても、黒田にその責を問うことは難しいだろう。非常にムカつくことかもしれないが。

 被告席で勝利を確信した笑みを、検察側へと魅せるに違いない。


 艦内の電源を喪失したのは、誰かが電気の配電盤に『海水が降り掛かるような仕掛け』をしたからだ。電気部品が塩水に弱いと知っているからこそ、そんな酷いことをするのだろう。信じられない。


 基本、船の風呂は海水である。シャワーだけの船もあるが。

 その配管から勝手に分岐して、配電盤室へと海水の管が延長されていた。そして、船が大きく揺れたタイミングで栓が外れ、電気系統を破壊するのに必要十分な海水が、タップリと注がれたのだ。


 そんな仕掛けを、乗組員自らが仕掛けるとは、とても思えない。

 私が推理するとしたら、きっと一週間前、下田停泊中に行われた『外部の者による犯行』と愚考するのが妥当。そう言えるだろう。

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