アンダーグラウンド掃討作戦(百三十七)
「あれで何かするの?」「そうそう。行ってみる?」「あぁ」
黒井がコントローラーを指さしていた。それを見て鈴木も頷きながら指さした。次に説明しようと思っていた機械だ。
そして立ち位置を見て、黒井から梯子を降りるように促す。
しかしその手前で、梯子を降りる黒井へ鈴木が注意する。
「一段づつ静かにな。飛び降りるなよ」
言われて気が付くこともある。だから階級が下なのに『命令口調』であっても、そんなことを気にしてもいられない。
ここは曲がりなりにも『潜水艦』である。『大きな音をたててはいけない場所』であると思い直す。
だから文句を言い掛けた口をグッと塞ぎながら、黒井はゆっくりと梯子を降りて行く。そして、そっと『揺れる地面』に降り立った。
振り返る者はいない。それよりも目立つ者がいたようだ。
「駄目じゃないかっ! 早くやり直せっ!」「はいっ!」
『俺じゃない』と黒井は思いながら、声のした方を見る。
誰だか知らないが、少尉殿に怒られている若い奴が。余程怖い上官なのだろう。返事をしたら、直ぐに飛んで行ってしまった。
年季が入っていてとても怖そうだ。目を合わせないようにしよう。
「こっち。こっち」「おう」
眺めていると、鈴木が降りて来て促される。黒井は後に続く。
今度は足元を見ながら、音をたてないよう慎重にだ。
そう言えば作業を続ける搭乗員達も、さっきから静かだ。まぁ、今の少尉殿の『雷』は、あくまでも『自然現象』として。
物品の角はゴム製のカバーで覆われていて、揺れて当たったとしても『カチン』という音さえしない工夫が見てとれる。
それに足音さえしないように気を付けているのか、とても静かだ。帽子の下には耳があって、実は皆『猫』だったりして?
「こちら、猫柳少尉です。開発元から派遣されて来ました」
何と本当に猫だった。こうなったら鳴き声も聞いて見たい。
「猫柳特務少尉です(にゃ)。よろしくお願いします(にゃ)」
声は至って普通だ。ゴツイ男だし。それに残念ながら、最後に『にゃ』を付けることもなく、極普通に喋っているではないか。
詰らないので、面倒だがこちらで勝手に補足しておくことにする。
「よろしくお願いします。黒井です」
「こいつは『テストパイロット』の、黒井中佐ね」
「おぉ、貴方があの『お噂』の黒井中佐ですか(にゃ)?」
誰も階級には気を使っていないようだ。
猫柳少尉も鈴木少佐の『言い方』を気にすることもなく、むしろ『有名人に会った喜び』を前面に出している。
「やっぱり『テストパイロット』より、『ぶち込み』の方が有名?」
「そりゃそうです(にゃ)! 出来れば『前の機』に乗って貰って、飛行をトレースさせて貰いたいです(にゃぁ)!」
技術畑の人間は、何処かぶっ飛んでいる。大きく口を開けて八重歯を見せながら、目を細くしているではないか。敬礼もそこそこに。
「では、早速説明に入ります(にゃ)」「よろしく」
コンソールに向かってキーを叩くと、メニュー画面が現れた。
「こちらのシステム、『猫まっしぐら』と言います(にゃ)」




