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アンダーグラウンド掃討作戦(百三十四)

 格納庫扉から館内に入ると、暖かい空気に包まれた。

 振り向く間もなく、早くも扉が閉められている。どうやら直ぐに潜航するようだ。何となく、既に斜めになった感じがする。

 乗組員が名残惜しそうに、最後の『外気』を楽しんでいた。


 黒井はもう、見る物、触れる物。いや、勝手に触れてはいけないと思っているので触れはしないのだが。

 とにかく周りが、珍しい物だらけで仕方がない。タオルで顔を拭いただけで、濡れた服もそのままに格納庫を眺めている。


「では大佐、下の指令所へどうぞ」「判った」

 艦長に促されて、黒田が梯子に取り付いた。そこで振り返る。


「黒井中佐は、飛行機の方を見ておいてくれ」

「えっ? 俺が操縦するんですかっ?」

 黒井は驚き、自分を指さした。目の前にある飛行機は、これまた随分と古そうな『レシプロ機』である。

 ちゃんと飛ぶのかどうかすら、怪しくて仕方がない。

 勿論こんな骨董品の『免許』も、保有してはいないのだが。


「これ、『二人乗り』なんだよ」「えぇ。知ってます」

 黒井が振り返り機種を再確認すると、苦笑いになってパッと振り返る。間違いない。知っている奴だ。それを見て黒田も頷く。


「おぉ。知ってんのか」「知ってますよぉ。『晴嵐』ですよね?」

「意外と有名なんだなぁ」「いや、そんなに有名じゃないですけど」

『だよなっ』という顔で黒田も同調して頷くと、更に問う。


「じゃぁ今、俺達は『何人』いるの?」「三人? ですけど?」

「どうやって東京に帰るの?」「えっ、これで帰る? マジで?」

 黒井は再び振り返った。ピカピカに整備されているが、どう見ても『博物館に展示している奴』にしか見えないのだが。


「じゃぁ、一人は『下にぶら提げて』行きます?」

 黒井が胴体の下を指さし、アルバトロスの方を見て提案する。

「あぁ、それでも良いなぁ」「ちょっと待てよっ!」

 上半身裸のアルバトロスが、体を拭くのを止めて怒っている。

「ブッひでぇ」「あははっ」「意外と行けたりして?」

 無責任なギャラリー達が呑気に笑っている。

 それに、どうやら黒井が『パイロットである』と認識したようだ。


 理由は凄く簡単だ。何人かはもう振り返っていた。

 そこにいたのは、ニヤニヤしながら歩いて来る男が一人。このイー407にも、黒井と『同類』のパイロットが搭乗しているのだ。


「うほっ! 『ぶち込みの黒井』中佐じゃねぇですかっ!」

 その声に黒井は聞き覚えがあった。直ぐに振り返る。


「おぉ、鈴木少佐ぁ! 『空の鬼神』が水中で何やってんだぁ?」

 二人は歩み寄って、先ずはガッチリと抱き合った。そして距離を取って敬礼し、握手まで交わす。

 嬉しそうに、激しく上下に振りながら。


「じゃぁ鈴木少佐、『レクチャー』よろしく頼む」

「はい。お任せください!」

 鈴木少佐の敬礼を見て、黒田と艦長は笑顔で梯子を降りて行った。

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