表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
779/1539

アンダーグラウンド掃討作戦(百三十二)

 マグロ漁船が遠ざかると、辺りは漆黒の闇に包まれた。

 何も見えない。点滅しているビーコンが明るくなる度に、黒田の表情が目まぐるしく変わっている。何れも変顔だ。ムカつく。


 それに比べるとアルバトロスの方が、ずっと冷静にも思える。

 浮き輪をしっかりと握りしめてはいるものの、時折波の頂上で吹く風に煽られて寒いのだろう。頭頂部を気にしている。


 黒井はそろそろ、限界に達していた。肩までどっぷりと海中に沈み、浮き輪に掴まっている手も悴む。

 反対の手は空にビーコンを掲げている。落とさないように、水で濡れないように気を使いながら。

 あっ、また黒田の変顔。『ベロベロバー』じゃねぇよっ!


 デブのアルバトロスと違って『筋肉質』の黒井は、海中での『耐久度』を比較すればやや不利である。

 まぁ、このままプカプカしているだけなら、どちらも『水漬く屍』と相成るのは判り切っていることだ。


 それにしても黒田の変顔は、相変わらずである。

 今度は『鼻毛ブー』か。きちゃない。『いい加減にしろ』と言いたい所ではあるが、そんな元気もなくなってきた。眠いのもある。


 すると突然、黒田の変顔が変わった。

 さっきまで黒井の目を見て変顔をし続けていたのに、遠くを眺めているようだ。こんな真っ暗な海で、何を見つめているのやら。

 そんなことより、今は睡眠だ。第一優先だ。

 いつ来るか判らない救助船。それを海上で待ち続けるには、体力が大事。温存するのだ。気力も体力も。

 明日になったら、黒田じじぃの野郎にガツンとだなぁ……。


 黒井が掲げていた手から、ビーコンが零れ落ちた。

 小さく『ポチャン』と音がして、それは三人の運命とは一足早く海の藻屑へ。ゆらゆらと揺れながら、海底を目指して落ちて行く。

 魚の群れの中に差し掛かると、赤いランプに驚いたのか魚が避けて泳いでいく。餌にしても大きかったようだ。

 やがてビーコンは、『コツン』と小さな音と共に何度かバウンドして停止した。その拍子に、点滅していた赤いランプも消えて、残念ながら壊れてしまったか。


 しかしビーコンは、海底に着いた訳ではなかった。

 不思議なことに、むしろそこから上昇を始めている。水深二十メートル、十五メートル、十メートル、そして五メートル。


「おい黒井っ! お迎えが来たぞっ!」「天使ですかぁ」

 沈みゆく黒井の襟首を掴んだ黒田が、笑いながら声を掛けている。

 その隣でアルバトロスは、水音と共に浮上した『黒い物体』に驚愕していた。存在は知っているが、実物は拝んだことがない。


 二十メートル程離れた先、漆黒の波間に突如現れたその物体は、角がなく全体的に丸みを帯びている。

 そして突然、そこから足元まで一直線上に伸びた島が浮上した。

 三人は絡み合ったまま、海中から持ち上げられる。その余りの衝撃に黒井も目を覚まし、辺りを見回した。そして大声を張り上げる。


「でけぇ! 何だこりゃ! てか『イー400』じゃねぇかっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ